私の使命は教えることではなく、人生が変わるガイドとして導くことです。
ずっと前の出来事を思い出しました。
私が名古屋で糸川英夫博士と一緒にいるとき、超有名企業の人が先生に会いに来られました。
名前を出せばだれもが知っている会社です、あえて言いませんが・・・
私の運転する車の後ろの座席に、先生とその企業の方が乗って会話していました。
聞くともなく聴いていました
担当者 「新しい商品開発をしてゆくうちに、糸川博士が特許をとられていることがわかりまして、つきましては、その特許を使用させて頂きたいのですが」
糸川博士「ああ、それね。 ずいぶん前にとったものです。いまは新しいことに取り組んでいて、過ぎたことには興味はありませんからどうぞお使いください」
担当者「それで、使用料はいかほど・・・」
糸川「そんなもの一円もいりませんよ。私、これまで特許はたくさん取りましたが使用料をいただいたことはありませんから。赤塚さん、この方をここで降ろして差し上げて。」
担当者さん、喜び勇んで降りてゆかれましたが、私は先生が取り組んでいる新しいことが知りたくて、
「先生!新しいことって何ですか!?」
車の中でずっと先生の話を聞いていました。
なんと! クジラと話をする方法を考案したというではありませんか!!
クジラは歌を歌うのですって!
南氷洋のクジラの歌を録音し、それを譜面に書き起こし、分析してクジラの言いたいことがわかったのだそうです。
そこで、先生はクジラに聞かせる歌を作り、それをチェロで演奏して録音し、クジラに届けるって。
感動したなぁ!
なんてロマンがある研究なんだー
糸川先生は、他の生物と会話する方法を確立すれば、いずれ人間の体内の細胞と話ができるようになり、ガン細胞にも話をすれば無駄な増殖はしないだろうという驚くべき仮説です。
古い特許のことでアタマが一杯になっている企業戦士には、こんなわくわくするロマンティックな糸川博士の話は聞けないのでしょう。
特許を取得するのは、成果を記録するためだという糸川博士ですが、それと真逆に、「これは私達だけのノウハウだ」と、過去の情報、知識、資格、見かけ上の学歴などにしがみついている方々がおられますね。
その代価は大きいのです。
価値のなくなったものにエネルギーを注ぎ込んでいますと、直観力がそがれていきます。
右脳による認識力は著しく劣化するのです。
だから、いいことはどんどん周りの人々に伝えることです。
そうすると不思議なもので、次々と新しい発想が涌いてきます。
囲い込んだり、自分だけの特権だと主張したり、すぐに裁判で訴えたり、秘密にして隠したりしていると、心も魂もさびついていきます。
知識や情報は使うためにあります。
囲い込んだり、取りこんだり、人に誇示したりすれば固まってしまいます。
自分がそれを使って違いのある独自の価値をつくり、まわりの人を喜ばせるためのものです。
糸川英夫の生き様は、まさに周りを照らす灯明台そのものでした。
師との真実の対話は、死に別れてから始まるというのは本当なのです。