腎臓にやさしい減塩生活のススメ 〜管理栄養士が教えるカラダと心の整えごはん〜
腎臓病や高血圧が気になる人が増えるなか、「減塩」は健康を守るための大切なキーワードです。
でも、「何をどこまで減らせばいいの?」「味気ない食事は続けられない…」という声も多く聞かれます。
このシリーズでは、全4回にわたり、管理栄養士の視点から“腎臓にやさしい減塩生活”の始め方と続け方を、やさしく・具体的にご紹介します。
食事の選び方、味つけの工夫、そしておいしい減塩レシピまで、“がまん”ではなく“納得して続けられる”ヒントを、一緒に見つけていきましょう。
全4回シリーズのご案内
第1回: 塩分、摂りすぎていませんか?腎臓がよろこぶ“減塩”の第一歩
第2回:腎臓をいたわるには?“腎機能を高める”食生活の新常識
第3回: おいしく続ける減塩生活!“味つけの工夫”と“選ぶべき食材”とは?
第4回: 塩分1g以下でも大満足!腎臓にやさしい豆腐ハンバーグレシピ
第1回: 塩分、摂りすぎていませんか?腎臓がよろこぶ“減塩”の第一歩
気づかぬうちに…塩分過多、あなたも予備軍かも?
「自分はまだ大丈夫」と思っていても、実は腎臓病の“予備軍”は年々増加中。特に自覚症状が出にくいため、
気づかぬうちに悪化してしまうケースも少なくありません。
その原因のひとつが、「塩分のとりすぎ」。
日本人の食生活は、昔ながらの味噌や醤油をはじめ、パンや加工食品などにも意外と塩分が潜んでいます。
毎日ちょっとずつの「つもり」が、じわじわと腎臓にダメージを与えているかもしれません。
なぜ塩分は腎臓に悪いの?
朝日新聞でも紹介された三浦教授(国立循環器病研究センター)の話によると、
人が生きるために本当に必要な塩分は、1日あたりわずか「1g」程度。
ところが、実際にはその何倍もの塩分を日常的にとってしまっているのが現状です。
塩分を摂りすぎると、体はそれを薄めようとして水分をためこみます。
その結果、血圧が上がり、腎臓には常に“高い水圧”がかかった状態に。
これが慢性的に続くと、腎臓はどんどん疲弊していき、機能が低下してしまうのです。
カギを握るのは「ナトカリ比」──塩分だけじゃない、腎臓を守る新常識
ナトカリ比とは?
「ナトカリ比」とは、ナトリウム(Na)とカリウム(K)の摂取バランスを示す指標です。塩分(ナトリウム)ばかりに注目しがちですが、実はカリウムにはナトリウムを体外に排出する働きがあり、この2つのバランスが腎臓や血圧に大きく影響を与えます。
実は自分が「どれだけ塩分をとっているのか」は、実際には把握しづらいもの。理想的には24時間尿を分析すれば摂取量がわかりますが、これは現実的に難しい方法です。
そこで注目されているのが、尿中ナトカリ比(尿に含まれるナトリウムとカリウムの比率)です。これによりおおよその塩分摂取の状態を推定できるとされており、簡易的な健康チェックとしても活用が進められています。
▶ 理想は「ナトカリ比1.0未満」(ナトリウム1に対してカリウム1以上)。
減塩と同時に、カリウムをしっかりとることが、腎臓を守るカギです。
現代人のナトカリ比はどうなっている?
日本人の平均ナトカリ比は 2.0〜2.2。これは、ナトリウムがカリウムの2倍以上ある状態です。
加工食品や外食の利用が多い現代では、知らず知らずのうちに塩分過多・カリウム不足に。
この状態が続くと、高血圧や腎機能の低下リスクが高まります。
ナトカリ比を改善するには?
ナトカリ比を整えるには、「減塩」と「カリウムを増やす」ことの両立が重要です。
🔹カリウムが多い食材
- 野菜:ほうれん草、かぼちゃ
- 果物:バナナ、アボカド
- 豆類:納豆、豆腐
- いも類:じゃがいも、さつまいも
毎日の食事に「生野菜」や「蒸し野菜」を一品プラスするだけでも効果的です。
🔺注意点:腎機能が低下している場合は要相談!
腎臓病が進行すると、カリウムが体内に溜まりやすくなり、「高カリウム血症」のリスクが高まります。
この場合、カリウムも制限が必要になるため、自己判断は禁物。主治医や管理栄養士と相談しながら食事調整を行いましょう。
おすすめの食べ方・工夫
- カリウムは水に溶けやすいため、なるべく「生で」または「蒸す・焼く」調理法で。
- ゆでるとカリウムがゆで汁に流出してしまいます。
- インスタント食品やスナック菓子、外食はナトリウムが多く、ナトカリ比が崩れやすいので控えめに。
- 旬の野菜や果物を日常的に取り入れて、無理なくナトカリ比を整えましょう。
減塩の効果はすぐに出る!
「塩分を減らすだけで本当に変わるの?」と思うかもしれませんが、
実は減塩の効果はすぐに体に表れます。
- 血圧が下がる
- むくみがとれる
- 心臓や脳の病気のリスクが減る
さらに、腎臓が休める時間が増えることで、慢性腎臓病(CKD)の進行を遅らせる効果も期待できます。
まずは「6g未満」の意識から
厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量は、
男性7.5g未満/女性6.5g未満ですが、
腎臓を守る視点でいえば「1日6g未満」が理想です。
食品表示をチェックしたり、味付けを工夫することで、無理なく減塩はスタートできます。
最初は「ちょっと薄味かも?」と感じても、続けていると自然と慣れていきますよ。
次回は 腎臓をいたわるには?
“腎機能を高める”食生活の新常識です