深夜特急に憧れて。7 〜陳サン〜 | 中辻 隆徳のブログ

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私たちは住所が書かれたメモを頼りに、今宵の宿へと向かった。

宿といっても、先ほどお世話になった、貿易会社の取引先の会社

の2階らしい。

場所は、南京西路と陝西南路に挟まれたブロックにあったように思う。

小さな会社と聞いていたので、3、4階建ての雑居ビルを想像したが

たどり着いたのは、2階建ての木造住宅だった。あたりで行水している

老人がいたり、子供が走り回ったりしていた。

出迎えてくれたのは初老の痩せた男性で、陳さんといった。

お互い言葉がわからなかったが、筆談と何とも中途半端なジェスチャー

で会話が成立した。漢字おそるべし。

1階は陳さんの事務所兼住宅、2階は倉庫と小さな部屋が2つあったと思う。

案内された2階の部屋は、簡易ベッドが2つあるだけの質素な部屋であった

が、私たちには十分すぎる立派なものであった。

陳さんには、泊まらせていただいた上に、夕飯までご馳走になった。

1階の事務所に備えられた小さなテーブルには、家庭的中華料理が

並んでいた。

空心菜の炒め物と冷えた青島ビールの味は今でも鮮明に憶えている。

テレビでは、経済ニュースが流れていて、陳さんは会話もそこそこに

熱心に株価の推移をみていたのが印象的だった。

窓の外は、もう夕方なのに建設工事の音がけたたましい。

今から思うと、アジアの巨竜の胎動は市井レベルでも

すでに始まっていたのかもしれない。

(不定期に続きます)



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