5年前に癌を兄を亡くしました。
ふっとその頃を思い出します。
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<千佳世は生きる><千佳世は生きる>新婚半年で末期がん宣告
毎日新聞 2011年1月28日(金)より
新婚半年で国内に数例しかない難治性のがんを告知され、
余命宣告を超えて病と闘う女性がいる。
京都府宇治市の酒井千佳世さん(31)。
今を生きることと懸命に向き合う姿は困難を抱える多くの人を力づけ、
その力が彼女の命を支えている。【山田泰蔵】
◇ネットで「闘病日記」 懸命な姿が勇気与え
1月27日。病院で今年8回目の放射線治療を受けた。
自宅の庭で友達がくれたクリスマスローズのつぼみが膨らんでいる。
白い花が開く日が待ち遠しい。
病院と家を往復する日々だが、
どこにいても携帯電話にメールが届く。
インターネットの会員制サイトで書いてきた日記が
「闘病日記」
となってもうすぐ4年になる。
読んだ人たちとの出会いを重ねてきた。
◇
07年3月の夜。残業中、左手の親指の付け根に小さなしこりを感じた。
検査入院した病院で言われた。「すぐに抗がん剤の投与が必要です」。
病名は胞巣状横紋筋肉腫。
筋肉の中にできた悪性の腫瘍(しゅよう)が次々と転移し、
成人で発症すると治療は極めて難しい。
医師は「もって半年」とみた。左脇下のリンパ節にも転移、末期だった。
腰まである髪を切り、闘病が始まった。
症例が少ないため有効な薬の開発が進まず、
副作用の強い抗がん剤を投与された。
激しい吐き気。脂汗にまみれベッドの上でのたうち回った。
手術のたびに体にメスの痕が増え、肌は土色に変わった。
目標があった。「あの頃に戻ってやる」。
社会に出て遠回りした末に、大手電機メーカー関連会社の職を得て3年。
「気が回って頑張り屋」と認められ、働く喜びを知った。
出会った瞬間に運命を感じた誠さん(31)との暮らしも始まったばかり。
一時は腫瘍が消え、医師を「奇跡だ」と驚かせた。
09年秋、肺や胸膜への多発転移が判明。
膨らんだ腕の腫瘍に触れるたびに恐怖に襲われ、
眠れぬ夜が続いた。「もう戻れない。
こんなボロボロの体で、私は誰の役にも立たない」。
だが誠さんは
「千佳世が生きてるだけで幸せや」
といつもほほえんでくれた。日記に書き加えた。
<私を支えてくれているすべての人のために、残りの人生をささげたい>
◇
その言葉はゆうこさん(35)の心を揺さぶった。
生まれたばかりの息子を連れて離婚。
昼夜二つの事務職を掛け持ちし、週末もデパートの食料品売り場に立った。
ある日、張りつめた糸が切れ、仕事中に突然涙があふれ出た。
うつ病とパニック障害と診断された。
家から出られず食事も取れない。
「母親失格。消えてしまいたい」と自殺の方法ばかりを考えていた頃、
偶然千佳世さんの日記を見つけ、引き込まれた。
<幸せとは、今この瞬間に感じるもの。未来に求めるものではないと思います>
「私は誰からも必要とされていない」と思い込み、
理解してくれない周囲を責めてきた。
でも、ありのままの自分を受け入れ一日一日を生きる千佳世さんの文章に、
道しるべを見つけた思いがした。何度も読み返すうちに、
傍らで寝息を立てている息子へのいとおしさがこみあげた。
復職を果たしたゆうこさんは昨春、千佳世さんにメールを送った。
<命の恩人です>
そのメールを千佳世さんは消灯後の病室で受け取った。
がん性の肺炎を併発し、「もう有効な治療法はない」と告げられていた。
「私も生きる」。携帯電話を握りしめて泣いた。
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今を生きるそんな想いです。