「パラサイト」「ジョジョ・ラビッツ」「リチャード・ジュエル」「ナイブス・アウト」「ロマンスドール」「1917」「野生の呼び声」そして「初恋」

 

久々に立て続けの映画三昧。

 

「パラサイト」はアカデミー賞受賞後、あらゆるところで語られているので、あえて書くことはない。もちろん面白かったし、最後まで飽きる事なく楽しめた。

ネタばれになってしまうが、ラストで頭を打った長男のギウが脳の一部を損傷して、おかしくもないのにニヤニヤする症状を発症してしまう。このシーンを見た時、「ジョーカー」の主人公が「笑い」をコントロールできない病をもっていたこととリンクした。

人間は、絶望の真っ最中でも笑ってしまうことがある。様々な説があるが、あまりに辛いと人は感情を停止させて何も感じないようにしたり、感情とは真逆の表現をしてバランスをとろうとするのではないかと思う。また、「笑う」ことによって、脳内ホルモンが出るので、己の意志とは関係なく、体が自己を維持するために「笑う」という行動をさせるんじゃないかなとも。

 

コロナウィルスではないが、人間が自分の意志で制御できることって、ほとんどないのかもしれないな……と思う今日この頃。

(「ジョジョ・ラビッツ」と「リチャード・ジュエル」にも共通のテーマを感じるが、あまり軽々しい言葉で括るのは憚られるので、ここでは割愛)

 

「1917」は下馬評通りの作品。気軽な気持ちで兵士になった2人の若者が、伝令として戦場を縦断する一晩の話。1シーン1カット。

最初はあまり魅力を感じない軽い若者が、最後は重みのある人間になっている。恐怖感、虚無感、義務感、任務への忠誠心、喪失感、安堵感、そして最後は生きている自分という自信……平和な世の中では感じる事ができない「感覚」を体験し続けた若者は平和な世の中に戻ったらどうなるんだろう。きっと、そんな「感覚」は忘れて、また生来の軽さを良しとして生きていくのかもしれない。決して、以前の自分には戻れない事を知りつつ……。

 

さて、「ロマンスドール」。

うーん。惜しい、実に惜しい。蒼井優ちゃんが主演した『彼女がその名を知らない鳥たち』は、「そうか、あなたはそうするしかなかったんだね。なぜなら、それがあなただから。そして、彼もそうするしかなかったんだね。わからないけど、わかるよ。そして、哀しい」という映画。もちろん感情が動く作品。

 

片や「ロマンスドール」は、同じく若い夫婦の話で、「そうだよね、そうするしかないよね」という作品なんだけど、なんだか妙にツルツルしていて、心に引っかからない。つまり感情が動かない。設定もストーリーも悪くはないんだけど。

 

そして、あ、そうか、蒼井優と高橋一生というキャスティングだからか~と一人納得。

2人ともとっても清潔でサラサラしているのだ。内面の激しさとドロドロを表現をするためのサラサラならいいんだけど、そこまで至らず映画は終わってしまった。

 

ロマンスドールというモチーフと、せっかく、きたろうとかピエール瀧とか渡辺えり子とか、厚みもくせもある役者が「人の好いキャラ」を演じてくれているんだから、主演の2人はもっと、「どうしようもない何かを抱えた」ドロドロを見せてほしかった。

とはいえ、やっぱり2人の組み合わせなんだろうな。

最近の高橋一生はなんとなく「あ、ここまでか」って感じのほうが強くなっている。

まあ、高橋一生に限らず、まだそれほど注目されていない時代のキラキラは時間が経つほど薄れてくるのも致し方ないか。この作品で今までのイメージを壊せたら良かったのに。惜しいな~。

 

蒼井優はいいと思う。(もう少しエロくてもいいけど)。あの笑顔はすごい武器だなと改めて思ったけど、使いどころ間違えないでほしいな。

男優が、もっともっと秘めたエロを感じさせる役者――例えば、最近話題の山田孝之とか、柄本祐とか(これも流行りだけど)、松田龍平とか―だったら、このサラサラした感じがよりエロや哀しさや自分の中のどうしようもなさを際立たせたのに。惜しいな~。

 

そして、ついに「初恋」観た!

やくざ、チンピラ、中国マフィア、腐った刑事たちが、「白い粉」を取り合って、騙し合い、殺し合う。

殺す事に躊躇などしない。躊躇なんてしていたら命取りだ。

そんな中、捨て子で天才的なボクシングセンスがある若いボクサー葛城と、実の父親の借金の方に売られヤク中になった娘、モニカが出会い、彼らの殺し合いに巻き込まれていく……。

 

この作品は、主役からわき役まで、全部の役者が見事にハマった。

 

狂気のベッキー、小賢しいチンピラの染谷翔太、腐った刑事の大森南朋、内野聖陽は一瞬、「え?似てるけど…なんか違う?」としばらく判別できなかったくらい、人相が変わっていた。そして、塩見三省。背広につけた東京オリンピックのバッチが妙にリアルだ。村上淳もいい。

一番下衆を感じたのは、医者の滝藤賢一。いや、実はとっても真面目な医者で、自分の誤診にひどくあわてて、何度も留守電に電話を吹き込んでくれる。誠実な医者だ。でも、でも、すごく下衆だ。

モニカ役の小西桜子もいい。自分を虐待した父の幻覚に苦しみ、自分を助けてくれた中学校時代の初恋の男が忘れられない。汚れ役なのに、全然汚れてない。父の幻覚に怯えてはいるが、憎んではいないのだ。何しろ、園子温の「ヒミズ」を見て、女優を目指したというから、今回の役を引き受けたのも納得。染谷翔太との共演は嬉しかっただろうな。

 

奇しくも「1917」も「初恋」も一晩を描いた作品だ。

夜中、命の危機に晒されながら、走り回り、やがて夜が明ける。

やっぱり単純だけど、夜が明けると、ほっとする。

 

コロナウィルスで、世の中は今混沌としているけど、夜明けはいつ来るのかな。

夜明け前が一番暗い、明けない夜はないといわれてるけどね……。