火をつけた おれ
火をつけたとも
からすは 横着もので
みみずく 無精もので
日ぐれの山みち
せなかいっぱい 火をつけてきた
火うち石 とてもかたくて
おれ なみだでた
あいつ たまげていった
ゆうやけだべか おれのせなか
ばかいえ ゆうやけ
おめの目のなかだべよ
あいつ なんにも知らず
とてもでっかなゆうやけ
せなかいっぱい
しょっていった
おれ ころげて家へかえり
両方の目だまへ お灯明
あげたともさ
唐がらしぬった おれ
ほおずきよりも大きな
唐がらしつぶしては
せなかいっぱいぬったとも
唐がらしばかみたいにあかくて
泣き泣き おれ
ぬったともさ
あいつ たまげていった
ゆうやけだべか おれのせなか
ばかいえ ゆうやけ
おめのまたぐらだべよ
あいつ なんにも知らず
またぐらかかえて
ころげては 泣いた
かずのこが 食いたい
てんぷらが 食いたい
おれ ころげて家へかえり
てんぷら あわててかくした
おれ 木の舟にのった
あいつ どろの舟にのった
ゆでだこのような夕日と
あいつ いっしょに
海にかくれた
おれ ばかをいっぴき
ゆうやけの海へしずめてきた
なぎさで おれ
なみだながしたともさ
ああ ああ
あいつ なんにも知らね
なんにも知らね
ゆうやけぐるみ
海へしずんだ
- 石原吉郎『ゆうやけぐるみのうた』より。


