なんとなく肌にしっくりくる空間、というものがある。訪れた街でも、なにかの作業をしている場でも、誰かと一緒にいる部屋の中でも。

 そこで微妙な違和感を感じるのなら、そこはきっと自分がいるべき場所ではないのかもしれない。いったんすっぽり収まってしまった場所から抜け出るのは、入るときの100倍のエネルギーがいるのだけれど、もがいてもがいて、気がついたらそこから離れていたということが、これまでの人生の中で何度かある。多くは、親しげにしてくれる相手と付き合っていて、笑顔がどこか引き攣ることが多かったときだ。

 もっと曖昧なのが、いま自分が踏んでいる土地に対してのことで、なんとなく合う、合わないという感覚から逃れることができない。この街が好きだ嫌いだという感覚には、はっきりした理由を求めることができない。

 

 

 人生の最期は、どこか川の近くの草原で野たれ死ぬのかもしれない。それもまた、いい。

 

 そういえば今日は、知人を介して初めて会う人とグラスを合わせる予定があった。その場が好きになれますように。