「図書館では文庫本を貸し出ししないで」という記事が話題になってますね。

 

図書館で文庫本貸さないで 文春社長が意見表明へ

 

 図書館に置いてもらうような本をあまり書いていない作家がいろいろ言うべきではないのかもしれませんが、社長さんの意見もわかります。単行本の所蔵は仕方ない、単価が高いし文化的価値もあるから。でも文庫本はその廉価版として安く広く読ませるために出版するものだから、それまで置かれたのでは……ということなのだと思います。

 これに対して否定的な意見が多く見られます。「図書館は敵じゃない。むしろ読書のきっかけや幅を広げる場である」と。

 これもわかります。実を言うと、僕もデビュー前、ほぼ毎週地元の図書館に通って館内で読み耽るだけ読み耽り、帰るときは貸し出し枠いっぱいの冊数を抱えて出ていました。その大半が小説の単行本でした。後年、それらの文庫版を書店で見つけて買うのが当たり前になりました。個人的な体験でいっても、図書館の存在は長期での書籍購入につながるものだと思います。

 商業デビューしてからは少し事情が違って、図書館では「小説」を借りなくなりました。読むと借りたくなるので館内でも読まないようにして。それは同業である小説家の著作物に対する、自分なりのリスペクトだったと思います。小説以外のエッセイ等は結構借りましたけど。

 ちなみに海外では、図書館の本が借りられると著者に印税が入る仕組みがあるようですね。これが日本でも導入されれば、これほど良いことはないのですが。

 

図書館で本を借りると、作家に1冊15円の印税 フィンランドの先進的図書館事情

 

 しかし実は図書館よりも、中古書店の問題のほうが大きいのでは、と思っています。

 理想としては、売れた中古本の収益から一冊当たり何パーセントかを著者に払わないと中古書店業を開業できないようにする、というシステムがあれば、古今東西和洋中華の作家たちは泣いて喜ぶと思うのですが。そんなふうになりませんかね。