開始直後の衝撃が収まり、読み放題が日常に組み込まれはじめた三日目の今日。僕のUnlimitedライブラリには、これまでに五冊が登録され、三冊が削除されました。
 コミックは短時間で読めるのでまぁ当然なのですが、小説も割と速いテンポで入れ替わっています。どこか頭の片隅に、丁寧に読まなくてもハズレだったら読み飛ばせばいい、という意識があるのは否めません。これから自分の読書スタイルが、多読ではあるけれど精読は少ない、という方向に傾いていきそうです。
 これを「コンテンツの価値が相対的に下がる」と捉えると、書き手としては自分の首を絞めることになるのですが、読み手としては「多々ある中から本腰を入れて読めるものを探す」という喜びが増えることになります。
 書き手としての自分も、こうした波の中でいかにじっくりと読めるものを書いていくかという試練と、これから向き合うことになるでしょう。間違っても「どうせ流し読みされるんだから適当に書けばいいや」とは思わないようにしたいものです。


 夏の日差しが燦々と窓辺から降り注ぐ中、朝から本棚の整理をしました。
 積んであった紙の本をきれいに並べ直し、ずらりと横に並んだ文庫本を眺めていると、どこかいままでとは違う感覚に襲われました。
 これまでは本が山ほどあることに抱いていた誇らしさに、ほんの少し違和感を感じたのです。どこがどうとか、はっきりと言葉にはできませんが。


 外出のとき、持ち上げた鞄が軽いことに気づきました。ちょうど紙の文庫本を一冊読み終わったところだったので、次の紙本は収めず、電子書籍のデータが入ったiPadだけを持ち歩くことにしたのです。
 この軽さがつまり、時代の変化ということかな。そんなことを考えました。


 これから先、自分の足が書店や図書館に向かう頻度がどうなるのか、正直なところわかりません。本が山ほど並んでいる光景は、いままでなら無条件にワクワクしたものですが、これからもそう思うのかどうか。
 ただひとつ言えるのは、中古書店に行く回数は明らかに減ると思います。「読んだページ数に応じて著者に印税が入る」という読み放題のシステムを、書き手としてだけでなく読み手としても歓迎している自分が、たしかにいるのです。