ほんの短期間だったけど、いわゆるご当地アイドルを取材していた時期がある。


 地元の小さなライブ会場やイベントでミニコンサートを行う彼女たちは、接してみるとごく普通の娘たちだった。「私、本当は○歳なんですよー」と公称よりずいぶん上の年齢を告白する顔や、ブログに「甘いものを控えてます」と書きつつ差し入れのケーキに目を輝かせる表情は、そのへんを歩いている女の子たちとなにも変わらない。それがいったんステージに立つと、フリフリの衣装から肉感的な脚を晒してパワフルな歌とダンスで聴衆を魅了する。アイドルという役割を楽しんでいる彼女たちは、とてもキラキラして見えたものだ

 それぞれのメンバーには当然固定ファンがついていて、どこそこでライブがあるときくと、法被とペンライト持参で駆けつける。ステージにいちばん近い場所でいわゆるヲタ芸を披露する彼らを、僕はどこか微笑ましく眺めていた。日常からちょっと離れた、いまここにしかない特別な時間と空間を、大好きなアイドルと共有して楽しんでいる。夏祭りで近所のおばちゃんが盆踊りを踊るのと何も変わらない。祭りが終われば彼らはそれぞれの日常に帰っていく。楽しい時間を一緒に過ごしてくれた娘たちに、心から応援の言葉をかけて。

 礼儀正しい彼らの態度に、僕はいつも好感を抱いていた。アイドルと接する時間は非日常であり、皆それを踏まえて楽しんでいるのだな、と。


 多くの人が指摘しているように、今回のことはアイドルとファンという構図で語るべきではないと思う。「若い男子は特定の女の子に執着してしまいがち」というのが本質だろう。対象はアイドルに限らず、好きな女の子からフラれたり、憧れている娘が自分に目を向けてくれないときなど、ネガティブな思いに囚われてしまう男子は少なからずいる。若い頃は特にそうだ。

 そんな若い男子に「あの娘はダメでも、君を受け入れてくれる女の子は必ずいるよ」と、誰かが教えてあげるべきではないか。それを怠ってきたのは、僕たち男の先輩だったかもしれない。

 こう書くと女性たちから怒られるかもしれないが、若い男子には敢えて言っておきたい。

 一人の女性に執着した挙句、人生を棒に振るのは愚かしいよ。女性は星の数ほどいる。