唯川恵先生の『とける、とろける』(新潮文庫)を読み終わって、うーん、と腕組みをしているところである。
どうしてこうも男女の性は違うのだろう。女性のほうが圧倒的に深いではないか。死とほとんど同義語の絶頂、片時も相手と離れられなくなる肉体の相手、それまでの行為がままごとに思えるような激しい情事。作品に登場するヒロインたちは皆、生を削り取るかのような官能に溺れている。それこそ溶けるように。
それに比べると、射精して果てる男の性など、なんと薄っぺらいことか。まいったな。
この短編集の中で複数の作品に出てきたテーマがある。実際に寝てみると蕩かすように女体を悦ばせてくれた、冴えない男、という存在の不思議さである。
「もうこの人なしではいられない」と女性に思われることは、男にとっては光栄ではあるのだが、正直なところ、少々怖い。男は相手との完全な合致という点に、それほど意識を向けないからだ。たとえ「どうして私の体をそんなに知っているの?」と訊かれたとして、当の男ははたしてそれに答えられるのだろうか。
おそらくほとんどの男は、相手を悦ばせるために、ただ夢中になっているだけだ。たとえば僕が「セックスのときに何をいちばん重要視している?」と訊かれたら、「誠意を持って相手を悦ばせること」と答えるだろう。ぴったりと合致させるなどという器用なことは、はなからできるはずがない。
つまり、相手との親和性とか肉体の相性、雄の性的有能さの察知といった諸々含めて、女性の性行為全体に対する感受性はきわめて高いのだ。呑気な男とは比べものにならないくらいに。
女性のほうが何倍も何十倍も、性を楽しめる。にも関わらず、特定の相手との限定的な環境においてしか、その悦びは得られないのが実情だろう。
広く浅い男とは対照的に、女性の性は、狭く深い。その底なしの深さを縁から覗き込んで、男はただため息をつくばかりである。今回改めてそう思った。
どうしてこうも男女の性は違うのだろう。女性のほうが圧倒的に深いではないか。死とほとんど同義語の絶頂、片時も相手と離れられなくなる肉体の相手、それまでの行為がままごとに思えるような激しい情事。作品に登場するヒロインたちは皆、生を削り取るかのような官能に溺れている。それこそ溶けるように。
それに比べると、射精して果てる男の性など、なんと薄っぺらいことか。まいったな。
この短編集の中で複数の作品に出てきたテーマがある。実際に寝てみると蕩かすように女体を悦ばせてくれた、冴えない男、という存在の不思議さである。
「もうこの人なしではいられない」と女性に思われることは、男にとっては光栄ではあるのだが、正直なところ、少々怖い。男は相手との完全な合致という点に、それほど意識を向けないからだ。たとえ「どうして私の体をそんなに知っているの?」と訊かれたとして、当の男ははたしてそれに答えられるのだろうか。
おそらくほとんどの男は、相手を悦ばせるために、ただ夢中になっているだけだ。たとえば僕が「セックスのときに何をいちばん重要視している?」と訊かれたら、「誠意を持って相手を悦ばせること」と答えるだろう。ぴったりと合致させるなどという器用なことは、はなからできるはずがない。
つまり、相手との親和性とか肉体の相性、雄の性的有能さの察知といった諸々含めて、女性の性行為全体に対する感受性はきわめて高いのだ。呑気な男とは比べものにならないくらいに。
女性のほうが何倍も何十倍も、性を楽しめる。にも関わらず、特定の相手との限定的な環境においてしか、その悦びは得られないのが実情だろう。
広く浅い男とは対照的に、女性の性は、狭く深い。その底なしの深さを縁から覗き込んで、男はただため息をつくばかりである。今回改めてそう思った。