先日バラエティ番組を見ていたら、「地球に接近する巨大隕石がある?」というテーマを検証していた。

 「もしそんなのがあるとしても、映画のアルマゲドンみたいに核でばらばらにしちゃえばいいですよね」とレポーターが言うと、専門家は「いや、あれは映画としては面白いけど、実際は破片が地球に落下してたいへん危ない。隕石の軌道を変えたほうがいい」と話していた。

 レポーターの「じゃあいっそ、地球をずらしちゃったらどうですか?」のコメントに、スタジオは大ブーイングであった。「そんなことできるわけないだろ!」


 ところが、やっちゃうんですね、これ。山本弘先生のSF小説『地球移動作戦』(早川書房)で。


 もちろん現在の話ではなく、ピアノ・ドライブという夢のエネルギーが開発された未来での出来事だけれど。

 ちなみに地球の一箇所、たとえば南極大陸を直接押して位置を変えるのはリスクが大きすぎるので、ある方法で地球を引っ張るのだが、ここから先は読んでからのお楽しみ。


 山本先生は、僕たちが子どもの頃ウルトラマンを見ながら夢想した宇宙や未来のイメージを、ハードSFという世界で再現しているように思える。きちんと説得力のある科学的な裏づけをベースに。作中にときどき無知な狂信者を笑う記述が出てくるのは、さすがに「と学会」の会長さんである。


 先生の書く近未来は読んでいて楽しい。現代のネット社会の発展系がリアルに描かれているからだ。この作品でも、バーチャルな秘書、友人、パートナーとしての存在として人間型の人工意識コンパニオンが登場するが、僕も含めた多くの読者は「進化した初音ミクみたいなものかな」とイメージしやすかったのではないか。

 こうした近未来のネット社会の設定は、とても現実的でありながら、どこか絵空事の部分を残していて、「本当の未来はどうなるんだろう」と思わせる。


 たとえばこの作品で描かれた世界では、映画会社は倒産し、人間の俳優は失業している。フリーの3D素材もキャラクターもあふれているので、センスがあれば家庭用のパソコンで大作映画に匹敵する映像が作れるようになったからだ。

 動画投稿サイトには素人が作った動画があふれかえっていて、そのほとんどはもちろん駄作だが、中には優れた作品もあり、その作者はこの時代の暗黙のルールとなっている「投げ銭システム」によって巨額の富を得ている……。

 まるでyou tubeの未来を見るようではないか。


 ちなみに、数年前に書かれたあの超弩級の傑作『神は沈黙せず』(角川書店)では電子書籍の未来が描かれていた。「缶ジュース一本の値段で小説が読めるなら、みんなそっちを読むさ」とベストセラー作家が語っていたのだが、残念ながらいま現在、これは当たっていない。


 さて、実際の未来はどうなるか。