ぞうきん まど・みちお
雨の日に帰ってくると
玄関でぞうきんが待っていてくれる
ぞうきんでございます
というしたしげな顔で
自分でなりたくてなったのでもないのに
ついこの間までは
シャツでございますという顔で
私に着られていた
まるで私の
ひふであるかのようにやさしく
自分でそうなりたかったのでもないのに
たぶんもともとは
アメリカかどこかで
風と太陽にほほえんでいたワタのh花が
そのうちに
灰でございますという顔で灰になり
無いのでございますという顔で
無くなっているのかしら
私たちとのこんな思い出もいっしょに
自分ではなんにも知らないでいるうちに
ぞうきんよ!
雨の日に帰ってくると
玄関でぞうきんが待っていてくれる
ぞうきんでございます
というしたしげな顔で
自分でなりたくてなったのでもないのに
ついこの間までは
シャツでございますという顔で
私に着られていた
まるで私の
ひふであるかのようにやさしく
自分でそうなりたかったのでもないのに
たぶんもともとは
アメリカかどこかで
風と太陽にほほえんでいたワタのh花が
そのうちに
灰でございますという顔で灰になり
無いのでございますという顔で
無くなっているのかしら
私たちとのこんな思い出もいっしょに
自分ではなんにも知らないでいるうちに
ぞうきんよ!
