水の章〔3〕一片の木切れ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 密売屋に行った翌日から、マーメイモン達は交代で商船の航路を見張り始めた。

 海底に座り、固いワカメをちまちまとかじりながら、船着き場を見つめる。

 五日目に、見張っていたオクタモンから連絡が入った。

 東の船着き場に小さな隊商が着いて、荷物を運び込んでいると。

 バシャについている隊章は、密売屋が渡してくれたリストに載っているものだ。

 つまり、目当ての十字路のバザールの割符を持っている隊商ということだ。

 マーメイモン達は素早く身支度を整えて、予定している襲撃地点に向かった。

 場所は、西の船着き場の沖合。東から来ると、陸が見え始める辺りで、船上のデジモンの気が緩みやすい。

 そして、水が濁っているために、船上から海中のデジモンを見つけづらい。

 マーメイモン達は、よどんだ海水の臭いに顔をしかめながら、所定の位置についた。

 

 数十分後、水面が小さく揺れ始めた。

 マーメイモンは緊張した面持ちで錨の柄を握り直す。

 やがて、波の向こうから一艘の船底が現れた。

 同時に、イッカクモンとオクタモンが勢いよく水面に飛び出した。

「《ハープーンバルカン》!」

「《海鳴墨銃》!」

 牽制射撃と、視界を奪う墨。船が大きく速度を落とす。

 その隙にマーメイモンは尾びれを大きく振って、甲板に飛び込んだ。

「動くんじゃないよ!」

 屈強な何体かが近づこうとしてきたが、マーメイモンが錨を振って蹴散らす。

「この隊商のボスはどいつだ?」

 ガワッパモンの言葉に、船室から一体のデジモンが姿を見せた。

 地上のデジモンは良く分からないが、茶色で丸々した、二足歩行のビーストデジモンだ。

「目当ては食料か?」

「違うね」

 ビーストデジモンの言葉に、マーメイモンは短く返す。

「あんたらが持ってる十字路のバザールの割符を渡してもらおうか」

 その言葉に、ビーストデジモンは、ほう、とわずかに目を見開いた。

「割符を海賊が手に入れても、大した役には立たないと思うが……食料ではダメか?」

「割符を出しな」

 マーメイモンの取り付く島もない言葉に、ビーストデジモンは溜息をついた。

「分かった。取ってくる」

 ビーストデジモンが船室に入り、じきに一片の木切れを持って戻ってきた。

 マーメイモン達に数歩近寄り、木切れを床に置いて下がる。

 マーメイモンの手振りで、ガワッパモンが木切れを拾った。それをマーメイモンに手渡す。

 マーメイモンは木切れをつぶさに見た。木切れの端に、何か文字が書きつけてある。密売屋が言っていた特徴と一致する。

 だが、マーメイモンはそれを床に放り投げた。

「偽物であたしを誤魔化そうったってムダだよ」

 そう言ってビーストデジモンを正面から睨む。

 割符の真偽は分からない。だが、割符は隊商にとって大事なものだと聞いている。

 その割に、このビーストデジモンは大して渋らなかった。それに、表情や仕草を見て直感的に嘘をついていると感じた。

 あたし達は、地上のデジモンのずるい手には騙されない。

 マーメイモンは錨の先を甲板に打ち下ろした。鈍い音がして、甲板にひびが入る。

「さあ、本物の割符を出しな。こっちは船を沈めて、お前らが溺れた後で割符を探したっていいんだ」

 マーメイモンの言葉に、ビーストデジモンが顔をしかめた。ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「私達にとっても、割符は商売に必要なものだ。どうしてもと言うのなら……」

 

 マーメイモンの視界の端に、動くものが映った。

 ピンク色の、小柄なデジモンだ。船尾から飛び立ったのか、小さな翼で懸命に飛んでいる。

 その足には、木切れが結び付けられている。

「何!?」

 マーメイモンが目を見開くと同時に、ビーストデジモンが片手を挙げた。

「総員反撃!」

 その声に、隊商のデジモン達が一斉に襲い掛かってきた。

 マーメイモンは錨を振り回し、敵の爪や火炎弾を弾き返す。

 こっそり逃げるデジモンと、急に反撃してきた隊商。

 つまり、あの小さいデジモンが、本物の割符を持って逃げようとしている。

「ピンクのちっこいのを捕まえな!」

 マーメイモンの大声に、オクタモンとイッカクモンが動いた。

 必死に陸へと飛ぶピンクの鳥を追い、ミサイルと墨汁弾を浴びせる。

 ピンクの鳥は幾発かを避けたが、墨汁にまみれ、羽毛が飛び散った。

 まっすぐ飛ぶ力を失い、よろめきながら陸の一角へと落ちていく。

「あたしらも退くよ!」

 マーメイモンは敵を蹴散らし、ガワッパモンと共に海へ飛び込む。

 一気に敵の攻撃の届かない深部へ潜る。

 そして、ピンクの鳥が落ちた方へと急いだ。

 

 

 

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約10か月ぶりの小説更新……!

大変お待たせいたしました!

仕事の疲労が溜まりがちで執筆が遅々としていますが、書きたい気持ちは少しも衰えていません。(早く闇の闘士を出したい←)

自分の元気具合を見ながらになりますが、今後も執筆は続けていきますので、見守っていただければ幸いです。