風の章〔4〕真実は権力者のもの | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 ジオグレイモンは半ば引きずられるようにして、町から連れ出された。

 イリス隊商のキャンプに戻ってきたところで、ようやくツチダルモンが手を離した。

 ジオグレイモンは荒い鼻息のまま、その場に勢いよく腰を下ろした。

 そのただならぬ様子に、グリズモンが怪訝そうに近寄ってきた。ジオグレイモンを胡散臭そうに見てから、ツチダルモンに視線を移す。

「ツチダルモン隊長、何かあったんですか」

 ツチダルモンは軽く頭を掻いた。

「まあ、ちょっとな。私が対処するから、グリズモンは配達に行ってくれ」

「はあ」

 グリズモンは納得できないような顔をしつつも、仕事に戻っていった。

 

 ピヨモンがジオグレイモンの顔をのぞきこんだ。

「さてと。少しは反省した?」

「何で俺が反省しなきゃいけないんだ」

 ジオグレイモンがうなりながら顔を上げる。黄色の目には、強い怒りがうごめいている。

「あのお触れは嘘っぱちだ。万が一、町長とグレイドモンが少年王の暗殺を謀ったのが事実だとしても、街中での戦闘なんてなかった。俺達は『虐殺』されたんだ」

 ツチダルモンがため息をつく。

「その言い分は分からないでもない。私だってあの時、町外れにいたんだ。あれは戦闘と呼べるようなものではなかった」

「だったら、何でさっき、広場で俺を止めたんだ!」

 ジオグレイモンの鼻から白い煙が噴き出る。

 一方のツチダルモンは、冷静にジオグレイモンの目を見つめた。

「王のお触れと、流れ者の言葉、信用されるのは前者だからだ」

「っ!」

 反論しようとするジオグレイモンを、ピヨモンが押し留める。

「つまり、あの広場ではお触れが真実だったってこと?」

「ピヨモンの言う通りだ。反論するための証拠が残っていない以上、ジオグレイモンの主張はまず通らない」

「……くそっ」

 ジオグレイモンがこぶしを握り、地面を力なく叩いた。

「草原の町は、とてもいい町だったんだ。警備隊員の俺の仕事なんてほとんどないくらい、平和な町だった。なのに、滅ぼされて、悪者扱いされるなんて、あんまりじゃないか」

 ジオグレイモンの頬を、涙が一筋流れた。

 ピヨモンは気まずい思いがして、涙からそっと視線を外した。

 広場で騒いだ時は呆れてしまったが、やっと、ジオグレイモンの町を思う気持ちが分かった気がした。

 放浪の民である自分達には分かりづらい気持ちだが、大切な場所だったことくらいは理解できる。

 だから、こんな一言が出てしまったのかもしれない。

「隊長、ジオグレイモンの言葉を信じてもらう方法はないのかな?」

 ピヨモンの言葉に、ツチダルモンが、ふむ、と考え込む。

「自分の意見を広めるには、まず広める手段が必要だ。それから、少年王と張り合えるだけの権力も。今のジオグレイモンにはどちらもない。反論したら最後、捕まって揉み消されるのがオチだ」

「広める手段と、権力」

 ジオグレイモンが記憶に留めるために復唱する。

 ピヨモンが片手を上げた。

「それって、どうやったら手に入るの?」

「自分と同じ目的を持つ者を集めることだ。隊商を組むのと同じだな。同士が増えれば、広報力と権力は自然と身についてくるだろう」

 ツチダルモンは「だが」と付け加えた。

「その前に、ジオグレイモン自身がもっと世間を知った方がいい。世の中を知り、相手に気を配れるようにならなければ、ジオグレイモンの元にデジモンは集まってこない」

 ジオグレイモンが眉根を寄せた。

「つまり……?」

「隊商の護衛としてこれからも旅をして、色んな場所を見なさいってことだよ!」

 ピヨモンが笑顔でジオグレイモンの肩を叩いた。

 ツチダルモンも、その通り、と頷く。

「世間を知るには、旅はうってつけだ。これからもイリス隊商の一員として各地を見回るといい」

「なる、ほど」

 ジオグレイモンは今一つ理解できてない顔のまま頷いた。上手く丸め込まれたことに、気づいているのかいないのか。

 ピヨモンもツチダルモンも、決してジオグレイモンを気遣っていないわけではない。

 ただ、ジオグレイモンは仲間を集める前に世間の厳しさを知り、諦めるだろうと思っていた。ジオグレイモンやイリス隊商にとっても、それが最善だと。

 この時は、そう思っていた。


 

 

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2か月近く空いてしまいましたが、ようやく『古代十闘士記』を更新しました! 短めですが、キリが良いのでここまで。

ジオグレイモンの属するダイナソーデジモンは、素直で相手を疑うのが苦手なので、口の上手い相手には丸め込まれてしまいます(笑)

隊商なんて口の上手いデジモンの集まりですからね。

次の話は、引き続き風の章にするか、新章にするか考え中です。

 

さて、『古代十闘士記』を書くにあたり、ワールドマップを作成しました!

今更感ありますが(笑)

別記事で上げますので、本作を読む際のご参考にどうぞ。