旅行記7日目~実践は授業よりも難しい~ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

UPできるレベルの小説を書けるほど暇がない、しかし何も更新しないのは忍びない。

そんな時のための、気楽に書ける旅行記です←

もう1年経っちゃいますねー。小説優先だから旅行記は全然進まないや。


さて、今回は予告通り、星流がドイツ人とサシで話した時のお話です。ちょっと難しい勉強について。



星流と陽菜がドイツに行ってから一週間ほどが過ぎ、曲がりなりにもドイツに慣れてきたある日。

おばさんが用事があって星流達に同行できないということになり、お友達のドイツ人男性にガイドしてもらうことになりました。若手の学者さんだそうで、背も高いし知識もある方でした。ドイツ語と英語だけでなく、おばさんから日本語も教わっていて、簡単な会話であれば日本語でできました。

星流も高校までで覚えた英語を駆使してコミュニケーションをとります。


その日、向かった先はサッカーグラウンド。屋根がない上に寒い風の吹く中でしたが、サッカー命の陽菜は「それでも行く!」と寒さの中観戦に向かいました。

星流? ふふ、ムリムリ。寒い中立ってるだけとかムリ(笑)

男性と近くの食堂で待っていることにしました。

陽菜が戻ってくるまで暇なので、二人で話をしました。日本語と英語をごちゃまぜにしつつ。


男性(以下男)「星流さんは学生ですか?」

星流(以下星)「いえ、もう卒業してます」

男「学校ではどんな勉強をしていたんですか?」

星「大学では○○を」

男「高校は? 日本語(=国語)の授業ではどんなことを教わるんですか?」

星「えっと、現代の言葉の小説とか、説明文とか。あと古い言葉の文章も勉強します。中国語の文章を日本語で読む勉強もしますよ

男「え!? 中国語を日本語で読む!? 中国語を勉強するのとは違うんですか?」


この時点で、やっべ、と思う星流。日本で漢文勉強してると慣れちゃいますけど、よく考えるととんでもないことやってるんですよね。中国語知らなくても内容分かるっていう。漢字を輸入した文化だからできる荒業です。

でも、ヨーロッパ圏の人からすれば

「ドイツ語の文章を英語を使って読みます」

と言われるようなものなんでしょう。滅茶苦茶驚かれました。

で、その次にくる質問はもちろん。


男「どうやって中国語を日本語で読むんですか? 教えてください」←ノート準備


ちょっと待てここで漢文の基礎を授業しろってかー!? しかも日本語と英語駆使しながら!?

自分が口を滑らせたとはいえ、ハイレベルの問題が巻き起こりました。陽菜はまだまだ帰ってこないし、相手の熱意を見ると無下に断れないし。

あ゛ー、こうなったらやってやろうじゃないの。

腹をくくってノートとボールペンを借ります。


星「こんな風に漢字があります。普通は上から順番に読みます。漢字に振り仮名を振る時はここに書いて……レ点があったらこの順番で読んで……一、二と書いてあったらこの順番で……」

日本語だとうまく通じないようだったので、途中から英語主体に切り替え。と、書くと簡単に聞こえるかもしれませんが。

実際に漢文の基礎を英語で説明しようとしてみてください。

超・難しいですから。

教科書が手元にあれば楽ですが、もちろん旅行に持ってってなんかいないし。電子辞書を時々引きながら、必死に説明します。

今までの英語の授業で「自分の故郷を紹介しよう」とか「名前の由来を説明しよう」なんて課題はありましたけど、「漢文の仕組みを説明しよう」なんて課題はありませんでしたよ。

実践英語って、難しいんですね……(遠い目)


しかし! それでも! 努力のかいあって!


男「なるほど、およそ分かりました」

星(やった!)


どうにか納得してもらい、調子づく星流。

そして、そのまま調子に乗りました。


星「じゃあ実際の漢字で説明しますね! (えーと、あ、そうだ。おばさんの家に四字熟語の掛け軸があったっけ)」


笑門来福……っとノートに記入。読んでそのまま、「笑う門には福来る」です。

まず漢字それぞれの意味を説明。

それから、笑の後にウをつけて、来と福の間にレ点をつけて、と説明していきます。

……しかし、どうも男性の表情がすぐれない。


星「どうかしましたか?」

男「どうして福(happy)が門(gate)に来ると家の人が幸せになるんですか?」

星「え?」

男「門と家は別のものです。どうして門に来ることが家に来ることとつながるんですか?」

星「え、だって門と家はセットじゃないですか。門まで来たら家までそのまま……」

男「???」

星「???」


どうやらドイツ人の感覚だと「門(gate)」は「門」、「家(house)」は「家」で全くの別物。門に来ることと家に来ることも別。

対して日本人の感覚だと門と家はひとつながり。門まで来たなら家まで来たようなものだよね、という感じ。




感覚の違い



この微妙なニュアンスで通じ合えず、二人で混乱に陥りました。

昔英語の先生が「単語の意味をそのまま訳しただけでは、単語そのものの持つニュアンスを訳しきれない」と言っていましたが、その理由がようやく分かりましたよ……。門=gate、家=houseだけじゃ訳しきれない何かが確かにありました。

どうにかこのニュアンスを説明しようとしましたが、「どうやら相手はこんな感覚でいるらしいけど、それを自分が理解することはできない」というところまで行くのが精一杯。



陽菜が「お待たせー!」と帰ってきた頃には、星流はすっかり力尽きていたのでした。

言葉と文化の交流が、こんなに難しいものだったとは……。でも、漢文の特殊さだったり、日本人のふわっとした言葉の使い方だったり、他文化と会って初めて分かるものってありますね。

そんな発見は、複雑な勉強の面だけではありません。

日常での決断の早さや結婚の考え方にも――。


と、長くなるので続きは次回。