【呟き】5年4か月・その2 | 沖縄パチスロ放浪記

沖縄パチスロ放浪記

東京でのスロプ生活に飽きて、2010年から沖縄に移住。

日々の生活を、酒を片手に、徒然と。

前の続き。

 

避難が解除されたことに対して、俺も行政に言いたいことは色々あるけれども、総じては良かったと思っている。小高の町なんて老人だらけだしよ、将来に放射能によって起こり得るかも知れない後遺症とかはどうでも良いから、自分の城で死なせてくれ、そう思っている爺婆も多いはずだ。それを止める権利は誰にも無い。有って良い筈が無い。

 

尊厳死、安楽死、の問題と似ている。自分の死に場所を自分の家に決めて、それを止める権利が誰にある?覚悟して切腹する奴の刃を、途中で横から止めて無理矢理にでも生かすことは、情けなのか?それが医師の情け?

 

武士の情けなんてものは過去の遺物、否定されて当然、ってことか?一方的に、押し付けるように?病院で、無理矢理にでも点滴を打たされて、延命されることを拒否したいのに、そう言う意志を示す機会すら許されず与えられず、混濁した意識の中で、死を待てば良い、と?

 

人権って何?自分で生死を選ぶ権利は無いの?それは、自殺を厳禁とするキリスト教的倫理観を西欧から押し付けられているだけだとは思わない?いわば宗教的強迫観念だよな?日本人にはそんな倫理観は、そんな宗教観は、昔は無かったのだけれど?と言うか、伝統とかの問題ではなく、個人個人の自由じゃないの、自分の最後ぐらい?少なくとも、この現代の思想に則れば。

 

人間の覚悟を止める権利は、他の誰にも無い。例えばだ、福島第一原発を、これは自分の設計したものであって、自分の子供みたいなものだから、これと共に隣に座って死にたい、と言う設計者がいたとして、それを止める権利は誰かにあるだろうか。俺にはあるとは思えない。

 

俺は両親に、こちら、沖縄に住んだら、と提案した。「ここで死んだら」とはさすがに言わなかったし言えなかった、が、でも、俺の提案はそれに等しい。「福島のあの地は捨てて、ここで一緒に暮らそう」、つまり、「福島は忘れよう」と言う提案を、した。

 

だが、両親は、帰った。沖縄にいたのは2年半程度、現在は、実家近くの避難命令が出ていない地域のアパートを借りて、避難命令が出ている実家とを日々往復する、傍から見れば非常に面倒な暮らしを、選んでいる。

 

避難命令は今日解除されはしたが、両親は今後も当分この生活のままだろう。スーパーや病院が小高に出来たら、アパートを引き払って実家に帰るとは思うが、まだまだ先の話になりそうだ。

 

親の選択を、止める権利も術も、俺には無い。例えそれで両親が早死にすることになったとして、それは親の選択だ。俺も後悔はしない。

 

もし親がどうしようもない阿呆、それこそ知的障害者、なら、殴ってでも止めるかも知れない。そういう特殊なケースに限り、親を止める権利は子供の俺に有ったかも知れない。

 

だが、見たところ、両親ともども、冷静に判断しているようだし、そこに俺が口を挟む余地が有る様には思えなかった。両親の好きにして貰うのが一番だし、それを許せる度量を見せることこそが、青は藍より出でて藍より青し、を達成出来た証として、親から与えられた巣立ちの課題帳に書き込んで提出するチャンスなのかな、とも思う。

 

何にせよ、避難命令の解除は、良かった。一つ、前に進んだ。日本人の自由は広がった。この狭い国土の中で、国に移動を制限されるような場所は極力減らした方が良い。かつて住んでいたところなら、尚更。立ち入り禁止の場所は減れば減るほど良い。

 

この小高のど田舎、今日はやたらと話題になったが、明日以降、特にニュースにもなるようなことも起きないだろうし、多くの人の記憶からは消えて行くだろう。忘れられる。

 

だが、それでいい。そうあるべき。南相馬市、小高、別に、目立ちたくは無いんだよ。ひっそりと暮らしたいからこそ、こんなど田舎に、皆、長いこと住んでいる。

 

目立たないことこそが平穏無事の日常の証拠である、と思う。現代におけるニュースってのは、大体マイナスのこと。実際、震災前にこの地がニュースで取り上げられるような、目立つようなことは、一切無かった。南相馬市、浪江町、こんな地名、皆、聞いたことも無かっただろう?

 

そんな、空気のような、全国区のニュースには名前すらも上がらない日常が、この小高町に戻って来ることを願う。それこそが、この地に住んでいた人々のささやかな願いだったのだから。

 

静かに暮らすこと、これを人生の意義と考える、そんな人がいても良いのではないだろうか?

 

冒頭の歌詞、俺はこいつらは実は大嫌いなんだけど、最後に「御金なんかはちょっとでいいのだ」と言う言葉がある。これは反芻すべき言葉かな、とは思ったね、当時中学生の餓鬼ながら。

 

こんな歌詞を書く奴に限って、後々有り余るほど稼げる、こういう運命にするって、やることが嫌らしいね、神さんよ。ま、ぐだぐだ言っても仕方ねえ、毎日毎日を、地道に、こつこつ、頑張りますか。

 

(終)