出逢って数年経ったころ

同じ居室のあの人の恋愛模様が
私の目にも耳にもたくさん入ってきてて
何ともいえない苦しさに
日々生きるのも精一杯って思ってた頃


突然仕事終わりにあの人から声をかけられた

『急いでるんで、すいませんけど車で送ってもらえますか?』


『え? いいですよ』

私はいつも通りに元気に応えた


それから
車内で初めての2人だけの時間が静かに過ぎ
あっという間に
目的地に着いた


あの人が降りる時
私は思わず
『握手して…』

って言った



あの人は黙って
ぐっと力強く
手を握り返してくれた




あれっ…


感覚が何もない…


初めて触れる
あの人の肌



触れた肌の感じとか
柔らかさとか
そんな
肌が触れ合ったという感覚が
何もなかった



あの人と私の
肌の境界線がないかのような
とても不思議な感覚だった



今まで誰にも感じたことのない
不思議な不思議な一体感だった