引退を自分で決められるスポーツ選手が一握りしかいないように、シリーズ終結を著者が自分で決められる作品もまた稀で、幸運といえるのかもしれません。

でも僕の『犯罪心理分析班』シリーズも違うかたちでの幸運が重なり、続編を皆さまにお届けできることになりました。

エンマ様シリーズドラマ化決定のときにも書きましたが、そもそも映像化は宝くじみたいなものなので、企画が持ち込まれたぐらいで喜べるものではありません。

頓挫して当然、百のうち一つ決まればラッキーみたいな感覚です。

だから最初に担当編集氏から報告をもらったときにも、まったく別の新しい作品と『犯罪心理分析班』シリーズの続編、どちらも準備しておきましょうという話でした。

『オイディプスの檻』の敗因は僕の実力不足もあるけれど、それ以上に作風が富士見L文庫のカラーからあまりにかけ離れ過ぎていた部分が大きいということで、レーベルのカラーに合わせた日常の謎的な新シリーズ起ち上げの準備を進めていました。

そこに持ち上がったドラマ化の話です。

もしもドラマ化が決定したら放映に合わせて続編が出せるように準備するけど、十中八九決まらないだろうと高をくくっていました。

だけどこれが意外にもいいところまで行っちゃったみたいで。

そろそろ新企画のプロットでも組もうかと考えていたところに担当編集氏から連絡が来て「決定ではないが、かなり確度が高い段階まで来たので、ひとまず新企画は棚上げにして『オイディプスの檻』の続編を書き始めてほしい」と言われたのでした。

『犯罪心理分析班』シリーズ化決定です。

 

ところがドラマ化の話は最終候補二作品まで残ったものの、落選という結果になりました。

残念だけどそれほど予想外でもないし、落ち込んだりもしません。

世の中こんなものです。

しのびないのは、せっかく二作目を出せることになった『犯罪心理分析班』シリーズが、おそらく二作のみで終了になってしまうであろうということでした。

ドラマ化が決定した際には大きくプッシュしてもらえるけれど、そうならなかった場合には、執筆中だった二作目『アイアンウルフの箱』もかなりの少部数でのスタートになるという話を聞かされていたのです。

 

あー残念。

これで終わりかあ。

プロファイリング、書きたいと思ってずっとあたためてた題材だったんだけどな。

ミステリーの扱いの上手いレーベルなら、普通に売れたと思うんだけど(失礼だけど偽らざる本音)。

他社でキャラや設定を変えたプロファイリングものを出すってのは……たぶん無理だよなあ。

 

そんなときに降って湧いたのが『オイディプスの檻』の重版、そして新装版での再スタートという話でした。

ドラマ化実現直前までいったことでポテンシャルがあると判断されたのか、同時期に放送されたエンマ様シリーズのドラマが追い風になったのか、ともかく営業がてこ入れしてくれることになったのです。

というわけでとても富士見L文庫とは思えない写真カバーが出回ることになったのでした。

おかげでシリーズ継続の可能性も出てきました。

 

たぶん、作品が思うように売れなかった作家や編集のほとんどは、もっとこうすれば読者にアプローチできた、可能なら作品の魅力を適切に伝えられる方法でプロモーションをやり直したい、という無念や悔しさを抱えていることと思います。

でもいったん世に出したものは引っ込められないし、別のアプローチを試したいと思っても実行に移すことは許されません。

 

ほとんどの場合は。

 

なので今回のケースは異例中の異例。

こういうかたちでセカンドチャンスを与えてもらえたのはとても幸運です。

『犯罪心理分析班』は幸運なシリーズだし、僕は幸運な著者です。

せっかくなのでぜひこの幸運を活かしたいです。

三作目、四作目とシリーズを続けられるように、皆さま応援よろしくお願いします。

 

いや、無理に応援とかはいいや。

まずシリーズ一作目を読んでみてください。

話はそれからだ。

 

今週末はサカソニです。

遊びに来てね。

 

あと2月16日(土)、八重洲ブックセンター本店での鈴木輝一郎出張小説講座in八重洲3rdにゲスト講師として登壇することになりました。

高野史緒さんと似鳥鶏さんも出ます。

小説講座といってもほとんどは楽しいトークショーで参加も無料みたいなので、お時間ある方はぜひどうぞ。

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