帰宅してからすぐ確定申告の作業に取りかかったので、忘れ物をしたのに気づくのが遅れたのです。
数日かけて伝票の入力とかやって、終わりが見えかけてきたころになり、そういやブックメイツで今月号のBURRN!買ったな、今月の表紙はマイケルシェンカーフェストだったな、息抜きにちょっとだけパラ読みしようかななどと考えたときにようやく気づいたのでした。
あれ? けっこう大きな紙袋で持って帰ってきたはずだけど、そもそもあの紙袋どこだ!?
しかし部屋をくまなく探してもそれらしきものは見当たりません。
そこに至ってようやく、これはどこかに置き忘れてきたに違いない! と確信したのでした。
こんなとき、忘れ物慣れしている僕は狼狽えませんよ。
忘れ物探偵・佐藤青南の出番です。
ただし忘れ物探偵が捜索するのは自分の忘れ物に限ります。
当日の自分の行動を反芻し、ミステリー作家らしい論理的思考で推理を巡らせます。
まずは打ち上げ。
打ち上げの居酒屋はブックメイツで予約したと狩野さんが言っていたし、もしも忘れ物をしていたら狩野さんに連絡が行っているはず。
ということは居酒屋ではない。
居酒屋の次に向かったのはオーパの一階に入っているカフェ。
閉店まで篠原昌裕さんとだべったな。
あそこじゃないか?
うん。たぶんあそこだよ。
ってか間違いなくあそこ。
もはや論理的思考そっちのけで勘に頼る忘れ物探偵。
電話してみましょう。
でもあそこのカフェ、スタバだっけエクセルシオールだっけ星乃珈琲だっけ?
駅から近かったというだけでぶらっと入ったので、お店の名前すら思い出せません。
『新百合ヶ丘 オーパ カフェ』で検索。
珈琲屋OB……BECK'S COFFEE……プロント……
あのビル、けっこういっぱいカフェが入ってるのね。
でもどれも違う気がするなあ。
結局オーパのHPにアクセスして、フロアマップからドトールと断定しました。
早速電話です。
「すみません。おうかがいしたのですが、月曜日の夜に本の忘れ物はありませんでしたか」
しばらく待たされて、「本の届けはありません」との回答。
でもすっかりドトールで忘れたと決めつけている忘れ物探偵は、電話を切ってからも懐疑的です。
「本の届けは」って言ってたけど、紙袋の中身を確認していないんじゃないか?
「本の忘れ物」じゃなくて「紙袋の忘れ物」という尋ね方をしたら答えも違ってきたのではないか!?
結果的にその後行ったラーメン屋に忘れていたことが判明したのですから、言いがかりもいいところなんですが。
それにしてもラーメン屋のカウンターの下の荷物置きって、なんでどこもあんなに忘れ物しやすい構造なんですかね(逆ギレ)。
そんなどうでもいい僕の忘れ物話にけっこうな文字数を割いてしまいましたが、3月5日の手売りサインイベントは大盛況でした。
こういうイベントの場合はどんな結果であれ失敗でしたなどとアナウンスすることはまずないんですが、今回は正真正銘大盛況の大成功、それも今後語り草になるんじゃないかというレベルの成功でした。
伝説です。
なにしろ2時間でおよそ500冊もの本が売れたのです。
あの場に居合わせた人にはよくおわかりでしょうが、なにかよくわからない高揚がありましたね。
まさしくライブならではの『体験』でした。
それこそすぐに家に帰る気になれず、たいしてお腹も空いてないのにラーメン屋に立ち寄って購入した本を忘れてくるぐらいの。
参加してくれた作家さん方(とくに発案の段階からいろいろと相談に乗ってもらった村山早紀さんと額賀澪さん)、狩野さんを始めとしたブックメイツの店員の皆さん、渋る版元から本をぶんどって品揃えしてくれた上に当日のイベントを仕切ってくれたトーハン田熊ちゃん、そしてなにより、急な告知にもかかわらずいらしてくださったお客さま、本当にありがとうございました。
ご存じの方も多いかと思いますが、僕は音楽から小説に転向した人間です。
転向の理由はいくつもありますが、その中の一つに、「小説なら一人で完結させられるから」というのがありました。
人が入ったり抜けたりするバンドの人間関係に嫌気が差していたし、辞めていくメンバーを引き留められない自分の才能の乏しさに失望していたし、自分のカリスマ性や人望のなさに絶望していたんです。
でも7年近く小説家稼業やってみて、大きな勘違いに気づきました。
作品を読者のもとに届けるためにたくさんの人の助けを借りなければいけない小説家という仕事も、けっして一人では完結させられないのです。
今回のイベントを通じて、とくにそのことを痛感させられました。
人に届けたいと願う以上、人とのかかわりを避けてはいけません。
テテテテッ、テッ、テッテーン!(ドラクエのレベルアップの音)
小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店さん、いままでどうもありがとうございました。
あの店で働いていた皆さまの今後のご活躍を楽しみにしています。
そして皆さま、まだまだ至らない佐藤青南を、今後ともよろしくお願いします。

