わたしには兄がいる。
小さい頃、いつもくっついて遊んでたから
兄の友だち数人と遊ぶ時は身体の小さくて
動きのとろいわたしは「おまめ」。
地域や時代によって呼び名は違うかもしれない
けど、要は優遇される存在だということ。
鬼ごっこやかくれんぼでも捕まっても、なしに
してくれるとか、バットに当たるまで打席に
立っていいよ、とか、そんな何かにつけて
こいつはしょうがないから大目に見みようぜ、
っていうルール。
…
ある職場の狭い人間関係での話。
体調不良を理由に残業を免れ、面倒臭い
仕事は回されず、職場ではマドンナ扱いで、
上司から守ってもらっている。
そんな女性社員がいる。
当然、そのしわ寄せは他の誰かに飛び火する
わけで面白く思わない社員も出てくる。
「なんであの人ばっかり許されるの?」
「わたしだってちょっとの頭痛くらい我慢して
残業だってしてるのに」
「やってられない、ムカムカする」
なんて具合に。
そんなひと同士が屈託して、ちょっとあの人に
イジワルしてやろう、なんて相談してる。
…
職場でも教室でもサークルや何かのコミュニティ
でも、少人数だろうが大人数だろうが
その人間関係の複雑さは無数に存在するのだろう。
そう思ってるのは、自分だけじゃない、
そう考えるのは普通の感覚なんだ、って
ちょっと安心してる自分もいる。同志を
得たような。自分がそう思ってるのと同じように
実は周りからは自分は「おまめ」と思われて
いるのかも、と思うとゾッとする。
軽いエッセイのようなタイトルと表紙の
デザイン。…からは想像出来ないような
毒づいたストーリー。
この話の中に食べるシーンが多く出てくる。
よくもまぁ、こんなにも美味しく無さそうな
表現を作り出せるモノだ、とちょっと感心
してしまった。
高瀬隼子、芥川賞受賞作。

