松葉杖をつく程のケガだった涼ちゃん、でも…代わりはいないし休めないし、痛い足を引きずりながら頑張っていました。
涼ちゃんの足もよくなり、夏真っ盛りになった頃お店は忙しい日もありました。
けれど、目標金額には到底及ばず、来る日も来る日も支払いの心配でした。
人間は哀しいですね…
やっぱりお金がないとケンカにもなるんです。
私と涼ちゃんはケンカと仲直りを繰り返しながら生活していました。
帳簿上は給料をもらっているようになっていましたが、とてもとても私達が給料を取れるような売り上げではなくなっていました。
もらったとしても支払いに回す、そんな構図が出来上がっていました。
8月のお盆も過ぎて落ち着いた頃、大きな支払いがありました。
お盆の頃になると忙しい日を見込んで、仕入れもいつも以上に多かったんですね、でも支払いは一件だけではないので、四苦八苦です。
どうやってここを乗り越えるか…毎日頭を悩ませていました。。
どうするどうすると言っている間にも毎日は過ぎて行ってしまい、ある日の夜、またものすごいケンカになりました。
昔から私はひどい生理痛だったのですが、この時もちょうど生理でお腹が痛くて痛くて仕方ありませんでした。
私は先にベッドに入り、寝ましたが、涼ちゃんはリビングにずっといたようでした。
今からすれば、涼ちゃんはとてもきちんとした人なので、どんなに眠くても寝る時は必ずベッドで寝る人だったんです、それがその日はベッドに来なかったんです。たぶんリビングでずっと考えていたのだと思います。
忘れもしません。
朝になり、私はお腹が痛くてまだベッドの中にいました。
リビングからはテレビの音も聞こえず静まり返っていましたが、涼ちゃんがいるのは分かりました。。
涼ちゃんが私が寝ているベッドへ来ました。
私は起きていましたが、パッと寝ているふりをしていました。
涼ちゃんは何も言わず、私にキスをしようとしました。
私は、それを力いっぱい振り払いました。
そしてまた布団を頭からすっぽり覆いました。
玄関が開く音がして、涼ちゃんが出かけたのが分かりました。
今日も忙しくなりそうな天気だから、早目に行ったんだな…
そう思いました。
私はベッドの上でいろいろと考え事をしていました。
そうしている内に時間は過ぎて、私もお店に行かなくちゃと思い、重い気持ちと体を起こして顔を洗いました。
リビングに座り、お化粧でもしようかな、とテーブルの上にポーチを置いてお化粧を始めました。
ふと、テーブルの上に一枚の紙がありました。手に取ると……
SEILLA、ごめんな
もう限界や
私はこれを読んで今まで感じた事のない感情が体から湧き上がりました。
え?!え?!え?!嘘!!嘘!!嘘!!どうしよう!どうしよう!どうしよう!
すぐさま電話をしようとしましたが、その紙の隣にはお店の鍵と携帯電話が一緒に置いてあったのです。
私は車の鍵を握りしめて家を飛び出しました。
たぶん帰るつもりなんだろう、地元に。駅に行かなくちゃ!!駅へはお店の前を通ります、お店を通ると、涼ちゃんの車がありました、急いで車を停めるとお店は開いていなくて、車は鍵が差し込んだままになっていました。
またすぐ車に乗り込んで駅まで車を走らせました。
こんなに遠く感じた道のりはありません。
どうしよう、どうしよう…
涙を拭いながら何度も一人でつぶやいていました。
どうしよう…どうしよう…
考えてみれば、涼ちゃんがキスするなんておかしかったんです。
いつも私からキスをして、涼ちゃんはそれを面倒くさそうに『なんやねん、早うせい!』と言いながらも必ずしてくれる、酔った時は自分からしてくれるけれど、仕事前はもう仕事モードに入っているので自分から私にキスをするなんてあるはずないのに………
どうして私は気が付かなかったの?!どうしておかしいと思わなかったの?!
車の中で自分を責めて責めて責めて責め続けました。
駅に着いて急いで駐車して、ホームに駆け上がりました。
夕方の人の波の中で私は泣きながら必死に涼ちゃんの姿を探していました。
涼ちゃん、涼ちゃん……
いくら探しても姿はありませんでした…
私がもう少し早く起きていたら…
もう少し早く気が付いていたら……
何本も新幹線を見送り、私は右手に自分の携帯電話を、左手には涼ちゃんの携帯電話を握りしめてホームを後にしました
*****続く*****