天帝妖狐
タイトル: 天帝妖狐
著者: 乙一
学校の、ひと気少ない男子トイレで喫煙するのを習慣としていた上村はある日、使用者など見たことがなかったそこに突然現れた謎の落書きを見つける。
――ラクガキスルベカラズ。
それをきっかけに、顔も名前も知らない者同士の交流がはじまった。
そこで行われる密談が、その後学校を騒がす怪事件を予告するものになるとは知らずに……。
……A MASKED BALL
「タル屋」と呼ばれるアパートを営む祖母と二人暮しをしていた高校生の杏子のもとに、今は行方不明となってしまっていたアパートの住人・夜木からの手紙が届く。
夜木の幼少から現在までが書かれたその手記には、夜木が「垂早苗」としたある契約と、神社で起きた事件とそこに至るまでの真相が書き記されていた――。
……表題作・天帝妖狐
まずは「A MASKED BALL」。おもしろかったです。
結構登場人物が多く、その中から怪事件の犯人と落書き犯が誰かを予想しながら読み進めるのが楽しいです。なんかウォー○ーを探せみたいで。
ただ、せっかくこれだけ(結構無意味に)登場人物が多いのに、四人の落書き犯のうち二人が、最後の最後までリアルで出てこなかったのが勿体無いというか、ちょっと肩透かしくらった気分でした。
でも、怪事件の犯人もとい落書き犯の中の一人の正体や、もうひとりの落書き犯の正体が意外な人物だったので、そこはよかったです。
もうひとりの落書き犯の正体……の人がずっと怪事件の犯人だと思ってた。まんまとだまされましたよー…。でもなんか、ほほえましくてよかったです。
「天帝妖狐」。
垂早苗の呪いによって、怪我した箇所が少しずつ人ならざるものと取り替えられていく……。
これ、垂早苗サイドで、少しずつ人間の体を手に入れていくさまをかいても面白そうだなぁ。
と余談はさておき。
垂杏子にあてた「手記」という形で書かれていくのがまた新しい。手記の前後の三人称と、手記の二人称の複合型。
二人称が意外と読みやすくて、一気に読めました。親しい人からの長い手紙は全然読むのが苦にならなかったりしますが、同じような効果でしょうか。
少しずつ着々と夜木が人間の体を失っていくところが怪しくも、次はどこを取られるのかわくわく(という表現は微妙ですが…)します。
人物も一人ずつちゃんと役割を持っているし、読み終えてパラパラめくっていくと気づかなかったところに複線があったりして、楽しい。
スネ夫が実はわりといい人だったり、タル屋に住むようになったり、お稲荷様のお部屋とか、夜木が結局どこへ行ってしまったのかはっきり書かれていないところとかが、なんだか無性にうれしかったです。好き。
ちなみにタル屋を売った犯人にいたっては、やっぱりというか、まただまされてしまいました。(というかあの人であってほしくなかったというか。)
夜木さんがかわいそう過ぎてもうちょっとどうにかなってほしかったかな、とも思いますが、うん、好きです。
読後感がよかったから、いくらか報われました。
乙一さんはいろんな意味で予想を裏切ってくれるからいいなぁ。(いや、私も騙されすぎだけど……)
読み終わって、Amazonのレビュー見てはじめて知ったんですが、「天帝妖狐」、文庫版とこっち(ジャンプJブックス)のほうで内容が全く違うみたいですね。
どんなふうに違うのか非常に気になるので、そっちのほうも(できれば近いうちに)読みたいと思います。