『金閣を焼かねばならぬ~林養賢と三島由紀夫~』(内海健:河出書房出版社)を読みました。

 

 

昨年10月に出版された本です。どうしても読みたかった本です。

 

昨年の9月末までの2年間、京都府舞鶴市に単身赴任してました。

 

三島由紀夫『金閣寺』の主人公・関口のモデルとなった修行僧・林養賢は舞鶴出身(生まれてから旧制中学3年生を終了して金閣寺に入山するまで)の人です。

 

単身赴任中の2年間、林養賢の生まれ育った成生(なりう)集落にある「西徳禅寺」を2回訪問しました。車を持ってなかったので東舞鶴駅から路線バスに1時間揺られて行きました。

バスの終着駅・田井から30分歩いて成生の集落まで行きました。

 

大浦半島の先、若狭湾に面した小さな漁村です。20数戸の漁村です。寒村という感じはなく、とても美しい集落でした。集落を抜けた高台に「西徳禅寺」はありました。

 

美しい思い出です。

 

林養賢のお墓は父方の実家にあります。東舞鶴駅から一駅福井県寄りに「松尾寺」という無人駅があります。この安岡という集落に林養賢のお墓はあるのですが、探しあてるのに苦労しました。

2回、この地を訪れてお墓を探しましたが見つかりませんでした。

3回目の探索で、親切な集落の人の案内を借りてたどり着けました。

個人で探しあてるのは無理な場所にありました。

 

林養賢の墓は、お母さん(志摩子さん)の墓と並んで建ってました。

 

70年前、金閣寺の修行僧だった林養賢は金閣寺を放火全焼させます。

国宝金閣寺を焼いたということで、当時は大事件となりました。

 

逮捕された林養賢は素直に取り調べに応じましたが、金閣寺を焼失させたことについては、「悪いことをしたとは思っていなす」「(放火の理由は)わからない」と供述しています。

 

この本の著者:内海健さんは精神科医です。精神科医としての立場から林養賢の心理を描いています。

 

林は刑務所に収監されてから数年後に統合失調症を発病し、満期釈放後に入院してすぐに死亡しています。

世間やマスコミは放火の「動機」を統合失調症と絡めて理解しようとしてます。

 

著者は、人間の行動に「動機」を求めるのは人の常ではなるが、行動の全てに「動機」があるわけではない。意識(動機)は行動のあとからついてくることも多い、林養賢は統合失調症の気質を備えていたが事件当時は発病しておらず、放火についての明確な動機はなかったとされています。

 

この本を読んでうれしかったのは、林養賢に対する「まなざし」がとてもやさしいのです。

 

本の半分を占める三島由紀夫への文学論は難しかった。よくわからない。

 

でも林養賢の記述についてはとても分かりやすくてよかった。