今回は、「不耕起栽培」について書いていきます。
□そもそもなんで耕すの?
そのままでは作物の栽培に適さない土壌に対して、表土の破砕によって土壌を柔らかくし、乾土効果をもたらすことを目的として実施される。また雑草の除去・漉き込みや、有機物の分解促進、土壌の団粒化の促進、土壌性の病害の抑制なども効果として期待される。
要約すると、
- 土を柔らかくする
- 雑草を減らす
- 有機物を早く栄養にする
- 土の保水性・排水性を高める
- 病気が出ないようにする
という効果を狙って「耕している」ということになります。
では、「不耕起栽培」 耕さないと土は硬く、草は増え、病気が増えるのかというとそうではありません。
□耕さないと土は硬く…
ただ耕さないだけだと、土は硬くなってしまいます。
植物を育てることで、植物の根が土を耕します。
また、茎や葉などの地上部を畑から持ち出さず、土の上に置いておくことで、ミミズなどの土壌生物や細菌などの微生物が増えます。
そうした土壌生物が活動することでも、土は耕されていきます。
更に、耕した後に雨が降り、晴れると、カチカチに固まっていたり、ひび割れたりと「雨降って地固まる」を目の当たりにできます。
□草はどうなのか
不耕起栽培では、基本的に土をむき出しにしていないため、鳥や風が種を運んできても芽吹くことが難しいです。
また、畝だけでなく通路もリビングマルチと呼ばれる被覆植物を栽培したり、有機物で覆ったり(有機物マルチ)しているため、草が生えることがかなり少ないです。
稲わらで畝の上を覆ってみたところ、夏の草はかなり抑えることができました。
ただ秋の草は強いのか、稲わらの分解が進んだのか、稲わらを薄くしか覆っていなかったところは生い茂ってしまいました。
厚く覆ったところでも、ギシギシは生えてきましたが、成長を阻害するほどではありませんでした。
□有機物の分解速度
有機物を分解するのは微生物が大きく関わっています。
不耕起栽培のときに多く活躍するのは、空気を好まない微生物が多いです。
その空気を好まない(嫌気性)の微生物は、有機物を分解する速度が遅いです。
ただ、冬のような寒さでも死なず、アレルギーの改善に役立つ微生物もいます。
詳しい話は、またの機会にお話しします。
ミミズやトビムシも分解してくれるので、一概に耕起したほうが早く分解するかはわかりません。
見えなくなるから、そのように誤認しているのかもしれません。
□土の保水性・排水性は悪くなるのか
耕さなくなってからというものの、雨の次の日でも通路が泥濘んでいたり、水溜りになっていたりということはありません。
他にも、有機物マルチを実施していることもあり、晴れの日が一週間続いても、朝露などの影響もあり土がカラッカラの状態になることはありませんでした。
このことから、耕さなくとも保水性や排水性が損なわれることはないと言えると思います。
□病気は増える訳では、
品種や品目、天候によっても罹患・感染する頻度や個体数も変化します。
なので一概に増えた・減ったと言うことは言えません。
しかし、耕起しているときと比べて著しく増加してはいません。
その代わり虫は、かなり多様かつ多くなりました。
名前の知っているものから、知らないもの、知りたいとは思わないものまで本当に数多います。
植物も終わりを迎えてくると抵抗力が下がるのか、虫の被害が多少発見されるようになりましたが、数える程度でしかありません。
結論としては、病気は特段変化しないけれど、虫は増える、といった感じです。
ただ、虫と言っても害虫だけでなく、益虫も増えています。
上記のことを考慮すると単に耕すのを止めるだけでは、良い土になるとは言えなさそうです。
良い土のためには、耕起を止めることに加え、有機物の投入が必定でしょう。
その有機物も、例えば稲わらだけ、米ぬかだけでなく、稲わら・米ぬか・落ち葉・木片・竹・炭・刈草など様々なものを入れてあげる必要があります。
人がお米だけを食べていては病んでしまうのと同じように、土も色んな栄養が必要となるのです。
耕すというのは、人で言えば手術のようなもので、必要なときにはメスをいれることもありますが、毎年・毎月・毎日行うようなことはないでしょう。