そうだ、札幌へ行こう。 | ストローク

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45才働き盛りを脳卒中が襲った。

あの日以来、カオルに経済上の自由はなかった。入院中に会社の口座の入出金を任せるためにwebバンキングの案s等番号やぱしワードを変更したままクレジットカードや通帳印鑑までもキョウコに没収されていた。そのまま一年以上が経過した現在もその状態は続く。キョウコの言い分もわかる。納税意識の欠乏から自宅マンションに抵当権を設定されキョウコの不安を呷った。あの人にお金を任せるとロクなことがない。ある分はすべて使ってしまう。と思ったのだろう。カオルとキョウコの住まいは関西でも屈指の高級住宅地と言われる苦楽園近くにあった。そこには見栄を張りたがるマダム気取りの主婦が溢れ、キョウコもそれらに交じりランチや歌劇観覧に時間を割いた。そんな生活ゆえいきなり、稼ぎ頭カオルの病気は堪えた。自分がみじめに思われることが許せなかった。いつも気取らず、涼しい顔で何気なく高級バックを持つような自分のスタイルが気に入っていた。ガツガツしていないのに持つものは持っているといったスタイルを好んだ。