episode 2 | ニューヨーク狂人日記

episode 2

メビウスの帯はまだ。
閉じたままで。
今はねじれた裏側を歩いているところ。

小中高。
12年間同じクラスだったSちゃんが。
いよいよNYへやって来る。



それでもやっぱり寂しい。
カウントダウンというのは。
年末のあれは<その先>があるからこそ。
誰もがハッピーになれる。
もし、そこで環がほころびていたら……。

大きな単位から小さなものへ。
20から始まるカウントダウンに入った。

余命がどのくらい残っているか。
そのときぼくは何をするだろう?
いや、きっと何もしない。
いつもと同じ日々をただ漫然と過ごしていることだろう。
その日もまた。

それでも。
数が減じていくにつれ。
片手で数を弄べるくらになった時には。

過ぎ去ったもの。
喪われゆくことに。
間違いなく。
撫でられていく。



最後の一本を大切に喫った。
いつものように。
根本まで。

喪われてゆくこのひとときを。
掌の中、温めるように。

オシマイ。



まるで一泊バス旅行のような軽装で。
到着口に現れたS君。
満面の笑顔で昔のように。
凹と凸は肩を並べ出口へと向かう。

友達というのは実にありがたいものだ。
「こんなことまで!?」
びっくりするようなことまで覚えていてくれる。



ゆっくりと回る回転式の自動ドア。
前のドアを少しずつ追うように歩いている時だった。

「セイキちゃん、ハイライトやったよね」
「?」
「いや~、なんもおみやげば思いつかんやったけど、
たしかハイライトば喫いよったとば思い出してね。
なんもなかばってん、これおみやげね」

薄暗いタクシーの中。
後ろへと流れ続ける街灯のあかりに。
ハイライトのカートンがまぶしい。
普段はくすんで見えるあの水色が。
それと週刊新潮の最新号。

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これまでの人生を振り返ってみると。
実に奇妙なことが奇妙なタイミングで起こる。

たとえば。
心機一転。
引越しの荷物を運び終え。
お疲れビールを買いに下りたアパートの入口に。
なぜかドラッグ・ディーラーが立っていたり。



幸いにしてタバコは「やめた」のでライターは持ってきていない。
かくして生まれて初めて。
37年目の禁煙は。
帰宅した午前0時過ぎ。
6時間で潰えた。
日本へ帰る機内よりも短い時間だった。

だが。
親友の志を裏切るわけにはいかない。



帰国の前日のこと。
テーブルの向こうSちゃんが笑いながら言う。

「でもねセイキちゃん。
あの10箱目の終わる頃に。
もし、また誰かがおみやげばくれらしたら、
それは神様が
『あんた一生喫わんといけんバイ』って言いよらすとよ』



Sちゃんと迎えた小学4年の春。
よそから転任してきた担任の先生を今でも覚えている。
「会うは別れのはじめと言います……」

別れはやはり寂しかった。
それでも別れよりも会えたことに感謝をしたい。



そんな顛末で。
玄関にまだランニング・シューズはない。



色々なカタチで応援してくれた皆様。
申し訳ないです。
たぶん、あと3週間で喫いおえます。

神様のダメ出しがなければ。

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