タイムマシン窓便り <2> | ニューヨーク狂人日記

タイムマシン窓便り <2>

また小さなタイムマシンに乗る。

歩道に店を出す屋台。
Bagel with Cream Cheese
パブリック・スペースで食べることにした。

前例のあとはなし崩し。
10数年の名物1ドル朝定も今はない。
屋台で買うベーグルとコーヒーで1ドル。
ある日、コーヒーが値上がりし、ベーグルがつづく。
また片方が上がり、もう一方も後を追う。
あれよ、あれよ。
いつの間にか2ドル。
アイスティーがあるからベーグルだけを買う。
$1.50也。

「あーあ」
椅子に坐って袋を開けりゃ、
「ガーリック」と言ったのに"Everything”を入れている。
Poppy Seedは好きじゃないんだ。
換えに行くのもめんどくさい。

「ガブリ」
ひと口。
ふた口。
???
少し離して断面を見る。
白いクリームチーズは右側2/3にしか塗られてない。
不意にジャムサンドのことを考えていた。
それにしてもLousy Jobだ。
アミーゴくん。
勤勉、真面目の代名詞はずっと前から神話となっている。

1ドル定食ではOKだったことも、
2ドルでは話がちがってくる。

いつも思うんだけれど、
よく屋台なんかでベーグルを買うな、と。
専門店へ行けば焼きたてふわふわ、モチモチが、
同じような値段で買えるというのに。
たっぷりとクリームチーズをのせて。
塗るのではなくのっている、はさまっている。
注文通りの品がちゃんと出てくるというのに。
それにしても毎朝、毎朝よく人が並ぶ。

それとも同じ人が並んでるように見えるだけなのか。
女ジプシーの物乞いが日によって別の赤ん坊を抱くように。
実は年に数度のタイムマシン乗りたちが、
入れ替わり立ち替わり並んでるだけなのか。
ぼくのように。

ともかくこの手の店の存在価値は、
「そこにある」
この一言に尽きる。
味や、値段とは異空間で成立する商売となった。



横目に人影が映る。
だんだんと近づいてくる。
案の定だ。

丸くなった黒ズボン。
白い汚れのあるこれも黒いウィンドブレーカーの背をふくらませて、
小柄な黒人男がやってきた。
腰にトランシーバーを揺らせて。

<風>という言葉を考えることがある。
社風であったり、今風であったり。
家風であったり、異風であったり。
洋風であったり、和風であったり。

「ああ風がちがうかな」
掃除の仕方が明らかにちがっていた。
清掃員の動きがちがう。

今坐っているパブリック・スペースと、
先月まで5年間坐っていた場所とでは。
上に立つ者の気持ちが下にも、
そして場所にまで現れている。

ここの風はぼくにはあわない。
風には逆らえない、逆らわない。
最近では風に向かって歩く男がかっこよく見えない。
吹かれ、流される方がぼくにはあっている。

この男を見たときに浮かんだ言葉は
「ズンダレ」
地元の方言でだらしないという意。
それは決していでたちだけではなく、
全身からにじみ出てきているもの。
歩き方、態度、喋り方。
ああ、これがこの場所の風なんだな。

"You can't smoke here."
(だろうね)

「どうかな」
とは思ってはいたのだけれど。
このひと月ほど見ていて。
張り紙もなければ看板もないし、
吸っている人を見かけたこともある。
ただ、試しに吸ってみただけさ。
これはタイムマシンではないけれど。

ほら、寄ってきた。



さて、次のタイムマシンに乗ろう。

エレベーターを降りてドアを押す。
またドアを押し、
振り返り閉じる。
坐る。

うんこの後は手を洗って歯を磨く。
最後のタイムマシンから降りた。



早起きはタイムマシンを持っておきたいから。
来週からは以前のパブリック・スペースへ戻ろう。
いい匂いの風が吹く場所に。
歩いて5分とかからない。
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