ドゥ、ドゥ、ドゥ
「んんっ......」
なんとか自分を押さえ込んでいるときがある。
下着姿の女性もそうだし、歩道に落ちている財布だって。
帰ろうと思っているのに店の人が出してくれたビールを前にしていたり。
ただ、幸か不幸かどちらにもなかなかお目にかかれない。
帰ろうと思っているのに店の人が出してくれたビールを前にしていたり。
これはたまにある。
行くとわかっているのに、飲みに行こうかやめようか、考えてみたり。
これはよくある。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
やさしく。
気持ちを込めて。
馬の首をたたくように。
本能をなだめる理性。
そんなひとつ。
寝袋。
日ごろはほとんど忘れてしまってるのに。
いざ目にしてしまうと、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
なかなか効かない。
テントもそうだ。
どうしてこうも寝袋は心に波を立てる。
長い間ホームレスをやっていたからではなくて、
そんな時代の前から。
ヘビー・デューティー。
そんなファッション、ライフ・スタイルが注目されたことがあった。
中学生の自分にはなかなか買えない高価なもので、
買えなかった恨みかもしれない。
いや、小学の頃から野生へのあこがれはあった。
『冒険手帳』
という、今で言うならサバイバル・マニュアルが、
近所の金善堂という本屋で買って宝物にしていた。
とにかく寝袋を見ると、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
半年前も、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
朝、濡れた歩道に落ちていた寝袋は、
帰宅するときには3mほど動いていた。
歩道にあったものが車道に停められたバイクの横へ。
親切な人が風に飛ばされたとでも思って、
元の場所へ置いてくれたのか。
バイクの持ち主がカバーと勘違いして、
かぶせようとして寝袋であることに気づいたのか。
3日間そこにあった。
80年代のNorth Face製。
まだファッション・ブランドでなかった頃のもの。
作りがちがう。
拾えなかった。
家の前の通り、アパートから50mほど。
近所の人の目が気になってしまって。
この10年間でだんだん縮んでいってしまっている自分を、
こんなところで感じてしまう。
電車やバスで、
たまに郊外へ出る。
長い、長い紙芝居を窓の向こうにぼんやりと見ながら。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
「うーん、あそこなら冬でもいけるな」
「あの奥は道からは見えないはず」
「おや、あそこは間違いなく人が住んでいる」
「斜面がちょっときついかな」
茂みを見つけてしまうと抑えきれない。
テントを張るのに適しているかどうか。
ついつい評価してしまう。
習い性。
これはやはりホームレスの頃のくせが抜けないから。
ねぐら探しの目線。
こんな自分も時のやすりにかけられて風化していくのだろうか、いつか。
久々に寝袋を買った。
3週間前だけれど。
もちろん必要でもあった。
柄と作りを見て、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
とうとう抑え切れなかった。
理性を寄り切る本能。
今日からは仕事場の片隅で1時間ほどの仮眠。
もちろんキャンプマットを敷いて。
ダンボールでもかまわないんだけど一応会社だから。
快適。
これでだいぶ楽になった。
残る3週間は何とか乗り切れそう。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」

やっと帰って。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」


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なんとか自分を押さえ込んでいるときがある。
下着姿の女性もそうだし、歩道に落ちている財布だって。
帰ろうと思っているのに店の人が出してくれたビールを前にしていたり。
ただ、幸か不幸かどちらにもなかなかお目にかかれない。
帰ろうと思っているのに店の人が出してくれたビールを前にしていたり。
これはたまにある。
行くとわかっているのに、飲みに行こうかやめようか、考えてみたり。
これはよくある。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
やさしく。
気持ちを込めて。
馬の首をたたくように。
本能をなだめる理性。
そんなひとつ。
寝袋。
日ごろはほとんど忘れてしまってるのに。
いざ目にしてしまうと、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
なかなか効かない。
テントもそうだ。
どうしてこうも寝袋は心に波を立てる。
長い間ホームレスをやっていたからではなくて、
そんな時代の前から。
ヘビー・デューティー。
そんなファッション、ライフ・スタイルが注目されたことがあった。
中学生の自分にはなかなか買えない高価なもので、
買えなかった恨みかもしれない。
いや、小学の頃から野生へのあこがれはあった。
『冒険手帳』
という、今で言うならサバイバル・マニュアルが、
近所の金善堂という本屋で買って宝物にしていた。
とにかく寝袋を見ると、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
半年前も、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
朝、濡れた歩道に落ちていた寝袋は、
帰宅するときには3mほど動いていた。
歩道にあったものが車道に停められたバイクの横へ。
親切な人が風に飛ばされたとでも思って、
元の場所へ置いてくれたのか。
バイクの持ち主がカバーと勘違いして、
かぶせようとして寝袋であることに気づいたのか。
3日間そこにあった。
80年代のNorth Face製。
まだファッション・ブランドでなかった頃のもの。
作りがちがう。
拾えなかった。
家の前の通り、アパートから50mほど。
近所の人の目が気になってしまって。
この10年間でだんだん縮んでいってしまっている自分を、
こんなところで感じてしまう。
電車やバスで、
たまに郊外へ出る。
長い、長い紙芝居を窓の向こうにぼんやりと見ながら。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
「うーん、あそこなら冬でもいけるな」
「あの奥は道からは見えないはず」
「おや、あそこは間違いなく人が住んでいる」
「斜面がちょっときついかな」
茂みを見つけてしまうと抑えきれない。
テントを張るのに適しているかどうか。
ついつい評価してしまう。
習い性。
これはやはりホームレスの頃のくせが抜けないから。
ねぐら探しの目線。
こんな自分も時のやすりにかけられて風化していくのだろうか、いつか。
久々に寝袋を買った。
3週間前だけれど。
もちろん必要でもあった。
柄と作りを見て、
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」
とうとう抑え切れなかった。
理性を寄り切る本能。
今日からは仕事場の片隅で1時間ほどの仮眠。
もちろんキャンプマットを敷いて。
ダンボールでもかまわないんだけど一応会社だから。
快適。
これでだいぶ楽になった。
残る3週間は何とか乗り切れそう。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ」

やっと帰って。
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