4階と6階のあいだで
4階と6階の間は?
転載ということをしたことはこれまで1度もなかったけど。
今回はちょっと。
■■■■■■■■■
「涙ふきなよ、またすぐ会えるからさ。大丈夫だって浮気なんてしないから……」
女の寝顔を見ながら故郷に残してきたガールフレンドのことを考えていた。「大丈夫」。何度もつぶやきながら。うなずきながら。いや、自分にいいわけしてただけかもしれない。カーテンからもれる朝陽の下でまた手が伸びていく。
そんな気分の今日このごろ。申し訳なさを断ち切ろうとする鉈。別れと未来、先にある不安。きっとコイツの方がいい、間違っちゃいない……。一方でたかまりつづける喪失感、懺悔の気持ち。でも、誘惑には、希望には抗いがたく、「だって」と正当化をする。
隣で眠る女。聡明で美人で。でも、土壌が違うからなのか、噛みあわなかったりでなかなかむずかしくて。でもそこが面白く、かわいくて。〈左)から教えなきゃならないときだってある。苦心して見つけた「お茶碗持つ方」という説明を発してみれば右手を上げる。どうやらご飯のときだけは左利きらしい。「お箸持つ方」と言い直す。
十年来心がけてるのは「物を増やさない」。かなり身軽な方だけど、いかんともしがたいものがひとつ。本。こればかりは。細胞のようにいつまでも増殖をくりかえす。
いかんともしがたい。いかんともしがたい。加えてノート、メモ。いつ使うのか、ほんとうに使うのか神さえも知らぬ資料。売ったり、捨てたり、処分したりはしのびない。なにせ幼少時代、親のつけたあだ名がボロ屋。長じて古着屋になるのだから洒落にもならない。
とにかく捨てられない。だから増やさぬ決意をしたのだが、本だけはいかんともしがたい。しかしもうパンク寸前で、このままでは広いところへ越そうにも左小指の先すらも動かせなくなってしまう。
そんなわけの一大決心。自炊。いわれるところの紙の電子化に挑んでいる。ノート以外の大部分をデータ化してしまおうと。部屋の本箱を一個にしようと。
なめてたな。実に甘かった。
軽さがお気に入りのeリーダで読むためには最低二度はソフトで加工しなければならなかったりで、なかなかスムースにことは運ばない。でも優柔不断なぼくには、これくらいのスピード加減が案外調子いいのかもしれない。
本の消えた部屋というのはどうなんだろう。爽快という風が吹きそうだけれど、足元には間違いなく喪失という空気が沈殿する。ふっ切れない男だ。触れる。そこにはゆるぎない安心感がある。隣に誰か寝ている。それだけで安心する。触れることがなくても、触れようと思えばそこにある。ぼくらはとんでもない岐路に立っているような気がしている。
形あるものに永遠はない。古び、磨耗をしていくからこそ物として存在することができる。ものとは。出会い、そして別れのこと。無常、永遠、唯物、女、距離……。本の背を切りながら流れていく。
また十冊買っちゃった。
■■■■■■■■■
さて4階と6階の間は?
答えはあした。

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転載ということをしたことはこれまで1度もなかったけど。
今回はちょっと。
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「涙ふきなよ、またすぐ会えるからさ。大丈夫だって浮気なんてしないから……」
女の寝顔を見ながら故郷に残してきたガールフレンドのことを考えていた。「大丈夫」。何度もつぶやきながら。うなずきながら。いや、自分にいいわけしてただけかもしれない。カーテンからもれる朝陽の下でまた手が伸びていく。
そんな気分の今日このごろ。申し訳なさを断ち切ろうとする鉈。別れと未来、先にある不安。きっとコイツの方がいい、間違っちゃいない……。一方でたかまりつづける喪失感、懺悔の気持ち。でも、誘惑には、希望には抗いがたく、「だって」と正当化をする。
隣で眠る女。聡明で美人で。でも、土壌が違うからなのか、噛みあわなかったりでなかなかむずかしくて。でもそこが面白く、かわいくて。〈左)から教えなきゃならないときだってある。苦心して見つけた「お茶碗持つ方」という説明を発してみれば右手を上げる。どうやらご飯のときだけは左利きらしい。「お箸持つ方」と言い直す。
十年来心がけてるのは「物を増やさない」。かなり身軽な方だけど、いかんともしがたいものがひとつ。本。こればかりは。細胞のようにいつまでも増殖をくりかえす。
いかんともしがたい。いかんともしがたい。加えてノート、メモ。いつ使うのか、ほんとうに使うのか神さえも知らぬ資料。売ったり、捨てたり、処分したりはしのびない。なにせ幼少時代、親のつけたあだ名がボロ屋。長じて古着屋になるのだから洒落にもならない。
とにかく捨てられない。だから増やさぬ決意をしたのだが、本だけはいかんともしがたい。しかしもうパンク寸前で、このままでは広いところへ越そうにも左小指の先すらも動かせなくなってしまう。
そんなわけの一大決心。自炊。いわれるところの紙の電子化に挑んでいる。ノート以外の大部分をデータ化してしまおうと。部屋の本箱を一個にしようと。
なめてたな。実に甘かった。
軽さがお気に入りのeリーダで読むためには最低二度はソフトで加工しなければならなかったりで、なかなかスムースにことは運ばない。でも優柔不断なぼくには、これくらいのスピード加減が案外調子いいのかもしれない。
本の消えた部屋というのはどうなんだろう。爽快という風が吹きそうだけれど、足元には間違いなく喪失という空気が沈殿する。ふっ切れない男だ。触れる。そこにはゆるぎない安心感がある。隣に誰か寝ている。それだけで安心する。触れることがなくても、触れようと思えばそこにある。ぼくらはとんでもない岐路に立っているような気がしている。
形あるものに永遠はない。古び、磨耗をしていくからこそ物として存在することができる。ものとは。出会い、そして別れのこと。無常、永遠、唯物、女、距離……。本の背を切りながら流れていく。
また十冊買っちゃった。
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さて4階と6階の間は?
答えはあした。
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