きょうの山口くん | ニューヨーク狂人日記

きょうの山口くん

 こんどの旅にでるまえに、私は、日本語についての講演を行った。そのなかで、こんなことを言った。
「日本語には、セックスからきたと思われる言葉があります。たとえば『ひとりよがり』なんかがそうです。これは自分だけが良い気分になること、あるいは、マスターベーションでしょう。ところが、これはもう別の意味の日常語になったいます、そんなふうに、言葉というものは変化します」
 終わって、質疑応答になったとき、若い美しい女性が立ち上がって言った。
「あのぅ、先生、『ひとりのみこみ』というのもセックスからきら言葉なんでございましょうか」
 さあ、困った。私は貴嬢(あなた)はそんなものは飲み込まないほうがようございましょうと答えた。

                        (山口瞳『男性自身 素朴な画家の一日』より)





「そろそろかな~」
伸ばしかけた指を抑えつけ腰を上げる。
未来を知る必要はない。

戸を引き、空を見上げていた時代があった。
これからを占うために。
傘を提げていくべきか。
蓑を持って出かけるべきか。

今、どれだけの人が空を見上げるだろう。
30パーセント。
なんて言われても、傘を三分の一だけ持ち出かけるわけにはいかない。
いちばん好きなのは
「晴れときどきくもり、ところによっては一時雨でしょう」

展開されゆく風景を知っている。
得のように思いがちだが、
損なんじゃないだろうか。

日本は出遅れ、アメリカは駆け足で。
前後が寄り添い、
今年の桜は日米同じ頃に咲く。
NYでは例年4月終わりが見頃なんだけど、
近所の桜はもう花ざかり。

図書館から少しだけ足を伸ばし、
ブルックリン植物園へ。
残念なことにメインの八重桜はまだつぼみのまま。
それでも枝垂れ桜やソメイヨシノは満開。
ネットの誘惑、開花情報に負けてたら、
風に舞う薄桃色の桜吹雪にお目にかかることもなかっただろう。
桜の下、文字に違うことなく甲羅干しする亀。



去年の桜は故郷で見た。
従兄と奥さんの3人で。
人も少ない平日の公園の坂道をのぼって。
子供の頃より遠くなってしまった海を眺めながら。

桜を追うように東京へ行った。
弁当の入った袋を下げ、母と姉の3人で。
人の絶えた小さな公園、夜桜の下。
誕生日を祝ってもらう。



来年はどんな桜を見ているんだろう。
そろそろ朝顔を植えよう。
2代目。
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