Mr. Blank <上> | ニューヨーク狂人日記

Mr. Blank <上>

"Blank is OK?"
"How many?"

ロングアイランドのタクシーで領収書を頼むと訊かれる。
肩越しに出てくる8割はブランク(空欄のまま)。
何も言わないのに3枚渡してくれたり。
サービスがいい。

領収書という立場は世界の中でそんなもんなのかもしれない。
無から有を生み出す可能性を秘めた。
打出の小槌を使いもたくさんいる。
錬金術師たち。

ぼくの場合はと言うと、
金額や回数が知れ渡っているので小槌は振れない。
ある人に言わせれば、宝の持ち腐れ、ということにもなる。

いっそネット掲示板に
「廉価譲タクシー領収書各種」
とでも出そうか。
バーチャル世界の出張人は結構いるかも知れない。

立て替えは回収しなくちゃ。
それでも雑多なもので財布がふくらんでると、
お金への片道切符が消えていることがある。
忽然と。
ブラック・ホールに吸い込まれたように。



日本での社会人生活が短かったせいで、
その習慣はあまり知らない。
いくつか知っているのは飲み屋のレシート。
そんな現場に何度か居あわせた。

「上様でよか~?」
手のひらの半分もない領収書にゴム印を押しながら、
隣の客におかみさんの声が飛ぶ。

今もこんなシーンはあるんだろうか?
もちろんそれはお盆前や年末にデパートがにぎわっていた頃の話。
お中元や、お歳暮でだれもびくびくしていなかった時代の昔話。
だいたい。そんな余裕があった時代。

クレジット・カードの半分もないサイズも驚きだったけど、
上様という言葉にやられた。
上様。
うえさま。
乞食だって領収書の上では上様になることのできる国。

仕事をはじめてからは各所で上様と出会った。
時には自分も上様になったり。
上様がいるのは文房具屋だったり、はんこ屋だったり。
金額も、店の規模もどちらかといえばコンパクトな場合が多かった。
小さなお城の上様。



日本人は現実的な民族なんだろう。
常に何かの対象を求めているような。
もちろん日本にだって空白のレシートは存在するんだろう。
でもやっぱり上様だ。
殿だ。
王だ。

もう50年以上ももめている君が代。
天皇崇拝者ではないけれど、
そんなものはどうでもいい。
「めだかの学校」を歌いながら、
青空にはためく「バカボンのパパ」を涙目で見上げるスポーツ選手がいたって、
それはそれでいい。
「君が代」+「日の丸」セットを眺める今と同じで、
たんたんとテレビ画像を見てると思う。



日本人は歌う
「千代に、八千代に……」
アメリカ人は旗を見あげ胸に手をあてる。
「星条旗よ永遠なれ」

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