暑中お見舞い申し上げます | ニューヨーク狂人日記

暑中お見舞い申し上げます


ニューヨーク狂人日記
そのときの自分のかたちをしていたい。


突発的行動を取る。奇をてらうわけじゃなくて。
いきなり自分の世界に入ってしまう。聞こえない。
Sickと呼ぶ人もいる。

たこ焼きが喰いたくなりどうしようもない。
合切袋をしょってどこかへ行きたくなる。
仕事中に唄いたくなる。
…………

どれも自分の感情に、生理に正直なだけなんだけれど。
人間として、動物としてあたり前の行動だと思うんだけど。
理性とか、自制。ちらつくそんな言葉。

気まぐれで入った飲み屋で数年ぶりに再会したY。
ビールをはさんで昔話をしながら、
半分かじった餃子を銀色の皿に戻しYは無言になる。
カバンをゴソゴソしはじめてペンを取り出す。
置いてきぼりを食らったぼくはグラスを傾ける回数が増える。

相変わらず切手を貼った絵葉書を持ち歩いていた。
色あせたページの角が反り返る黒い住所録。
宛名を書き終えると、何事もなかったかのように餃子を酢醤油につける。



「日本人の方ですか?」
夕涼みをしている欄干から、声の方へと首を向ける。
小柄な日本女性が微笑んでた。
川の向こうに沈んでゆく夕陽を見ながら話を聞いてみると、
初めての海外旅行はご主人からのプレゼント。
隣にいるどこかはにかんだようなヨーロッパ人女性は、長年の友。
45年目にしてはじめて会う文通相手。
1ヶ月をかけて2人でヨーロッパを回っているという。

ペンパル。ペンフレンド。
忘れていた言葉たち。
今はどうなんだろう?
昔は、旺文社の中×時代なんかの後ろの方に、
「ペンパル募集」というコーナーがあった。
学研の中×コースにも。

変わったようで、変わってない。
未知の人に会いたい気持ちは。
方法が変わっただけで。
未知だからこその恐怖、可能性……。
未知だけが持つ魅力。

そんな中で出会い。
歳月の一部を共有し、今、初めて会う。
そんな2人に感動していた。



気まぐれに「ぽとっ」、ポストに落とす。
郵便受けには思いがけない日に、思いがけない人から。
日常に没している頃に届く返事。



ペンパル募集とインターネット。
頼みとなるのは文面からにじみ出る、その向こうにいる相手。
手書きであれ、テキストであれ。
文章っていいな、そんなことを思うひと時。
文章だからこそわかることもある。
どれだけ自分を詰め込むことができるか。
形あるものとないもの。
どれだけ相手をくみ取ることができるか。



いい加減 直らないかな筆不精 暑中見舞いは遠い夏の日。