爪きり | ニューヨーク狂人日記

爪きり

公園の朝、爪を切る。
直線で曲線を描く。
海岸線に張りだした山すそ。
巻き込むラインに線路を敷いていくように。

線路と車輪間にあるアソビ。
かわりにヤスリで爪の角を削る。
これまで辿ってきた凸凹道にもヤスリをかけてみようか。
ついでにポリッシュをしたっていい。
いっそのことサロンへ行こうか。
きれいな韓国ネーサンに手を握られながら過去を削り、
居心地のいい昔話に変えてしまう。
甘皮の手入れもしてもらい涼しげな顔で暮らすのもいい。

いやいや。
いやだ。

NYの地下鉄。
Fトレイン。
ブルックリンへ入ってしばらく経つと地上に出る。
Carroll St.駅と Smith St.駅の間は大きくカーブをする高架でつながれる。
後ろの車両からは、陽光を浴びた先頭付近の車両がまぶしい。
まるで過去を振り返ったときに見える、
自分とは関係のない電車のように。
車輪をきしませながら轟音とともに大きなカーブを曲がっていくFトレイン。
落ちそうで落ちない。
ヨロヨロだけどなんとか。
落ちたら負けだな。
自分の道程が高架を走るFトレインと重なっていく。


ヤスリを使うのはやめた。
シャンプーの時髪に引っかかってしまうかもしれないけれど。
いつかは角も落ち、なめらかになる。
爪は伸び、また切る。

どこかにはさむか、引っかけるかしたんだろうか。
白い部分の幅がここだけ広い。
右手親指の爪。
どこまでが必要で、どこからが不必要なんだろう?

さっきまで自分の一部であったものをゴミ箱に捨てる。