蛇の道のへびオジサン
オジサン。
1ヶ月前までよき隣人だった。
今はホームレス。
2年ほど前からはじめた空き缶集めを続ける、働くホームレス。
なりたての頃、季節はずれの寒さを心配したり。
食事のことが気にかかったり。
会えばタバコやビールのj陣中見舞い。
オジサンは今も元気だ。
もしかすると、昔以上かもしれない。
心配がふっきれてしまったから。
いつかやってくる。
間違いなくやってくる。
その日。
やって来たその日、ぼくも途方に暮れた。
しかし、あまりにもあっけない幕切れで、
呆然とするだけで実感はわかない。
あまりにも簡単に」ことが終わってしまって。
時間は人を削りもすれば、図太くもする。
痩せながら太り、太りながら痩せていく。
もう、心配はしていない。
ただ不思議なだけで。
あまり、人にものごと訊くのは好きじゃない。
訊かれるのが嫌いだからだろう。
中には、いや、ほとんどの人は訊いてもらいたいのだろう。
しゃべりたい。
でも、訊かない。
時おり、その不思議を思い出しては首をひねり楽しむ。
「どうやって……?」
1年前と変わらぬオジサン。
1年前と同じ場所に住んでるオジサン。
不思議なんだが同じ場所、同じ家に。ホームレスなのに。
オジサンが立ち退いたその日、玄関には錠前がおろされた。
入ろうとする者を拒むというよりも、威圧するような大きなものが。
あくる日になると数人のメキシカンがやってきて、
次々とガラクタを道路に置かれたダンプスターへ投げ込んでいく。
3日目。
「あー、いなくなっちまったなー」
帰宅時に、隣の家へ目を投げかけていた。
3日前までの彼の家。
夜、8時になると、
"C'mon baby. Come eat. C'mon!!"
裏庭からは、猫くんたちを呼ぶ大声が聞かれていた。
道路に面した2階の窓がどこかちがう。
見上げると、犬の絵の描かれたサインが張られている。
「監視カメラ作動中」
ビールを買いに行った時に会ったオジサン。
大きなショッピングカートを押しながら、いつもの大またで横を歩く。
歩みを緩めると、彼もゆっくりに。
「じゃ、またな」
玄関からは錠前が消えていた。
手を上げて中に消えてゆく。
???
さすがに、ショッピングカートを前庭に残すことはなかったが。
数日後の夜。
珍しく、電話に出てみた。
普段は出ないのに。
電話は嫌いだから。
「あのさー。ガスがつかないんだ。
料理させてくれるかな?
30分もかからないと思う」
翌朝、窓を見上げてみた。
ガラスの向こうにゆるく貼られたロープには数足の靴下が。
3日前。
裏窓から身を乗り出しネコくんをさがす。
ちいさな光が懐かしい場所から目端を刺す。
裏庭側の角にある窓から灯りが漏れている。
ろうそくの灯りではなく白熱灯だ。
このごろ、オジサンの家の窓を見上げて帰るのが習慣となっている。
昨日はまた変化が。
マーチン・ルーサー・キング
バラク・オバマ
ネルソン・マンデラ
3人の肖像画がが道行く人に微笑みかけていたる。
2階にある3枚の窓。
監視カメラの警告サインを両側からささえるように
左側に肖像画、右側にはくつ下のシルエット。
そういえば、5日ほど前には女性を見た。
しばらく姿を消していたオジサンのガールフレンド。
悪びれるところは微塵もなく
"Hello~"
軽く上げた右手をヒラヒラとさせながら、錠前の消えた玄関から出てくるところだった。
追い出されたオジサン。
今は、ホームレスとなって旧居に住む。
さて、どうやってあの錠前を外したんだろう?
どうして窓に物を飾っちゃうんだろう?
この世はわからないことばかり。
ミステリーにはことかかない。
8時になると聞こえてくる。
"C'mon baby. Come eat. C'mon!!"
1ヶ月前までよき隣人だった。
今はホームレス。
2年ほど前からはじめた空き缶集めを続ける、働くホームレス。
なりたての頃、季節はずれの寒さを心配したり。
食事のことが気にかかったり。
会えばタバコやビールのj陣中見舞い。
オジサンは今も元気だ。
もしかすると、昔以上かもしれない。
心配がふっきれてしまったから。
いつかやってくる。
間違いなくやってくる。
その日。
やって来たその日、ぼくも途方に暮れた。
しかし、あまりにもあっけない幕切れで、
呆然とするだけで実感はわかない。
あまりにも簡単に」ことが終わってしまって。
時間は人を削りもすれば、図太くもする。
痩せながら太り、太りながら痩せていく。
もう、心配はしていない。
ただ不思議なだけで。
あまり、人にものごと訊くのは好きじゃない。
訊かれるのが嫌いだからだろう。
中には、いや、ほとんどの人は訊いてもらいたいのだろう。
しゃべりたい。
でも、訊かない。
時おり、その不思議を思い出しては首をひねり楽しむ。
「どうやって……?」
1年前と変わらぬオジサン。
1年前と同じ場所に住んでるオジサン。
不思議なんだが同じ場所、同じ家に。ホームレスなのに。
オジサンが立ち退いたその日、玄関には錠前がおろされた。
入ろうとする者を拒むというよりも、威圧するような大きなものが。
あくる日になると数人のメキシカンがやってきて、
次々とガラクタを道路に置かれたダンプスターへ投げ込んでいく。
3日目。
「あー、いなくなっちまったなー」
帰宅時に、隣の家へ目を投げかけていた。
3日前までの彼の家。
夜、8時になると、
"C'mon baby. Come eat. C'mon!!"
裏庭からは、猫くんたちを呼ぶ大声が聞かれていた。
道路に面した2階の窓がどこかちがう。
見上げると、犬の絵の描かれたサインが張られている。
「監視カメラ作動中」
ビールを買いに行った時に会ったオジサン。
大きなショッピングカートを押しながら、いつもの大またで横を歩く。
歩みを緩めると、彼もゆっくりに。
「じゃ、またな」
玄関からは錠前が消えていた。
手を上げて中に消えてゆく。
???
さすがに、ショッピングカートを前庭に残すことはなかったが。
数日後の夜。
珍しく、電話に出てみた。
普段は出ないのに。
電話は嫌いだから。
「あのさー。ガスがつかないんだ。
料理させてくれるかな?
30分もかからないと思う」
翌朝、窓を見上げてみた。
ガラスの向こうにゆるく貼られたロープには数足の靴下が。
3日前。
裏窓から身を乗り出しネコくんをさがす。
ちいさな光が懐かしい場所から目端を刺す。
裏庭側の角にある窓から灯りが漏れている。
ろうそくの灯りではなく白熱灯だ。
このごろ、オジサンの家の窓を見上げて帰るのが習慣となっている。
昨日はまた変化が。
マーチン・ルーサー・キング
バラク・オバマ
ネルソン・マンデラ
3人の肖像画がが道行く人に微笑みかけていたる。
2階にある3枚の窓。
監視カメラの警告サインを両側からささえるように
左側に肖像画、右側にはくつ下のシルエット。
そういえば、5日ほど前には女性を見た。
しばらく姿を消していたオジサンのガールフレンド。
悪びれるところは微塵もなく
"Hello~"
軽く上げた右手をヒラヒラとさせながら、錠前の消えた玄関から出てくるところだった。
追い出されたオジサン。
今は、ホームレスとなって旧居に住む。
さて、どうやってあの錠前を外したんだろう?
どうして窓に物を飾っちゃうんだろう?
この世はわからないことばかり。
ミステリーにはことかかない。
8時になると聞こえてくる。
"C'mon baby. Come eat. C'mon!!"