今はまだ寒さが厳しいが、近くの公園では、夏になるとクマゼミ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミなどの合唱が早朝から聞こえてくる。この声を聞くと、夏の甲子園の高校野球とともに、私の税理士試験のチャレンジ時代を思い出す。
 

 甲子園に出場できる高校は、苦しい練習に耐え地方大会を勝ち抜いた球児達である。その球児達が甲子園の炎天下の中、頂点を目ざして無心で試合をしている姿は、いつも見る人に感動を与え続けている。

 私も高校時代は、野球部に2年間所属した。炎天下の中での猛特訓で心身ともに鍛えられ、今でもそれが私の中に生きている。グラウンドの片隅の桜の木々からセミの声の合唱が聞こえていたが、暑さに負けずに鳴くその声は非常ににぎやかで力強かった。
 

 19歳からは、今度は税理士試験に打ちこんだ。
 試験は一見、頭脳だけが必要に思えるが、試験時期は8月である。私の受験当時はクーラーもなく、真夏の試験場では、厳しい暑さと高い湿気で汗がポタポタと答案用紙に落ち、さらには目にしみて集中力が失われていく過酷なものだった。

 大切なことは、ハングリー精神で最後まで諦めずに試験問題に食らいついていく闘志だ。
 その時の某大学の試験場でも校庭の桜の木でセミが鳴いていた。その鳴き声が私に高校時代の苦しかった猛特訓を思い出させ、「これくらいのことでへこたれないぞ」と頑張る力となった。
 

 この受験経験を語ったのは、あきらめずにチャレンジしつづけることの大切さとともに、スポーツや仕事、勉強は成果(結果)も大事だが、それを達成する過程、すなわち、いかに人として人間として日々成長できたかも重要なことだと言いたかったからである。
 目標・目的を達成しようと思って、執念で自分自身を極限状態に追い込んで継続して鍛え抜いてこそ、集中力・忍耐力・暗記力・読解力・応用力・先見力などのあらゆる力がレベルアップして、思いにつながるようになってくる。そしてそのことが後々いろいろな面で役立つのである。
 

 また、いつも健康には注意して、日頃から食事や運動も適度な対応を心掛けてベストな体力を維持することも大切なことである。
 合格ラインに達しても、いざ本試験で心身が病んでしまっては、目標・目的は達成できない。

 というのも、私自身が40代前半の頃、十二指腸潰瘍や自律神経失調症を患ったからである。あの時は、「この税理士試験の重荷を投げ捨ててしまいたい」と思った。いかに健康が大切か思い知った時でもあった。
 

人は誰もが迷い苦しみながら生きていくものである。しかし、その途中で心の支えになるものが私にはあった。
 例えば、高校時代に知った徳島県の郷土詩人・細井菊枝女史。この人の歌碑が卒業アルバムに載っていて、「たゆまずに つよくも学べ あづさ弓 矢を射る如く進むとぞ聞く」という歌である。私は、心が落ち込んだ時は、この歌を何度も繰り返し読み、自分を励まし続けた。

 また、父に教えられて般若心経を唱えるようになり、その最小限の言葉の表現の意味するところが実感として感じられるようになった。
 「能除一切苦(のうじょいっさいく)」
苦しみ、痛み、怒り、悲しみ、それはあなたが生きているということ。どんな嵐も必ず止む。
 「色不異空(しきふいくう) 空不異色(くうふいしき) 色即是空(しきそくぜくう) 空即是色(くうそくぜしき)」
無心になることで、こだわりや欲を捨て去ることができるようになる。そうすることで巡り巡って自分の思いがかなうようになる。
 

 また、近年、相田みつをの作品が静かなブームとなっている。人として人間としての根幹部分を表現した詩は、私の心の中心点をとらえて感動し心の支えとなっている。
 

 私が季節外れのこの時期に「セミの声」を書きたくなったのは、今の本当に厳しい状況下で勝ち残るために、私の思いを少しでも参考にしていただければと思ったからである。

 私たち「団塊世代」で時代を生き抜いてきた者の物事に対する意識や考え方と、今の現役世代の人達の物事に対する意識や考え方が大きく変化してきたことは事実である。「夢や目標をめざす」「チャレンジする」「本気になる」「がむしゃらになる」「ハングリー精神」「プロ意識を持つ」など、日本人としての良さも忘れられたり希薄になってきており、グローバル化に対応して勝ち残るために必要な心の根幹部分が不足している。

 この根幹部分を改善、改革して上手く進めてこそ、世界をリードする物づくり日本の復活がありえるのである。

 

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