「伊勢大神楽〝入門〟体験記」(その2) 中條真之介
主な1日のスケジュールとしては、だいたい午前7時から午後4〜5時にかけて巡業を行っており(毎日およそ百数十件の檀家を訪れています)、朝は5時半ごろに起床して、宿に帰ってから数時間稽古をしています。獅子舞は基本的に獅子・後持ち(獅子の尾をもつ)・笛・拍子(太鼓)の4人で構成されていて、特に獅子や笛はある程度修練を積んだ上で参加させてもらえることになっています。1日あたりかなりの件数をこなすこともあり、基本的には巡業中の実践によって修練を積む形になっています。
獅子もカウンターでしばし休憩
入門してみて驚いたことはいくつもあるのですが、特に大きなものは巡業を回すために同時に多くの作業をこなす能力が求められることでしょうか。芸を行う際に歩いたり採り物を受け渡したりしながら笛を吹くという動作が要求される上、チームごとに別れて巡業を進める中では遠くにいて見えない別チームと笛や拍子の合図でやり取りをしながら仕事をこなす必要があるなど同時並行で仕事が進行していくので、慣れないうちは何をどうすればいいか、また周りで何が起こっているのかがわからず結構大変です。
修行中の笛を披露
土曜会の懇親会にて
大神楽師を志す新人が最低限1人前になる目安としてはだいたい6ヶ月~1年間かかるのですが、私は組に合流してから1ヶ月を過ぎたところなのでまだまだこれからです。毎日慣れない作業をおぼつかない手際でこなし、たくさん叱られながら日々を慌ただしく過ごしております。(了)
「屋根裏通信」26号(成城寺小屋講座 2023)より転載