東日本大震災で、
俺は自営業が恐くなった。
俺のところは震度6だった。
宮城県と同じだ。
海なし県なので、
津波こそなかったが、
お店も損害を受けた。
建物も被害を受け、
商品もぐちゃぐちゃになった。
父が買いあさった不動産も
被害を受けた。
地震がショックだったのか、
心臓病と認知症の父も
脳梗塞で倒れた。
世の中は福島原発と食料不足、
ガソリン不足、
そして大きな余震への不安で、
パニックになっていた。
地震と父の脳梗塞が
いっきに襲ってきた。
お店をやっている場合では
なかった。
誰も助けてくれない。
自分で何とかしなければ
ならなかった。
「自営業は誰も助けてくれない」
あの時、
はっきりとそう自覚した。
自営業は怖い。
うちの会社は無借金で、
すべて自己資金で回していたため、
銀行はここぞとばかりに、
融資の誘いに連日やってきた。
すべて断ったが、
背筋が震えた。
建物の修繕に、建設業者たちが
連日やってきた。
うちの状況を見越して、
甘い汁を吸おうとしてる
連中が群がってくる。
怖かった。
大きな会社はいい。
資金力でどんどん回復してくる。
サラリーマンから見た震災と、
俺から見た震災とでは、
感じ方が全く違う。
自分で会社を建て直さなければ、
他に誰もやってくれない。
誰も助けてくれない。
お金も人材でも。
うちは
5人の従業員さんがいるだけの
個人店だ。
震災と父の病気の
ふたつの出来事が、
俺に恐怖を抱かせた。
震災後、毎日が必死だった。
今考えると、
よく乗りきったな。
よく うつ病やパニック障害に
ならなかったな。
それまでは、自営業は
誰にもしばられずに、
自由にやれるいい仕事だと
思っていたな。
休みもないし、長時間労働
だったけどね。
俺にとっての震災は、
「自営業への恐怖」だった。
今でも時々、夢を見る。