
(神奈川県横須賀市鷹取山 神武寺)
屈伸する男のリュック冬紅葉 奥 要治
今月の池袋「第一谷端川句会」での奥要治さんの作品。
誰も取らなかったが、私はこの句を「特選」に選んだ。
季語「冬紅葉」が実にいいのだ。
屈伸する男のリュック山紅葉
屈伸する男のリュック照紅葉
と較べてみればわかる。
「冬紅葉」であるから「紅葉シーズン」はすでに過ぎている。
山はすでに、いつもの静けさを取り戻している。
そこへリュック姿の男が現れ、山の入口で屈伸運動をしている。
これから山へ登るのであろう。
この山を愛する男は、この山の、
冬紅葉の美しさ
も知っているのである。
むしろ、ひっそりとした山こそ、彼にとって本当の山なのであり、山や冬紅葉との対話を楽しむように歩き出す。
登山道には落葉がたくさん散り敷かれている。
このような風景を、季語「冬紅葉」が全て語ってくれている。
今日は福島たけし(「コトリ」代表)さんと鷹取山へ登った。
福島さんはまるで、この句の主人公のような方である。
山を愛し、冬紅葉を心から愛する人である。
鷹取山は標高139メートルの「里山」であるが、「名山」の呼び声が高い山である。
(詳しことはわからないが…)地質学的にも面白い山だし、三浦半島は林業が盛んでなかった為、古代からの植物体系が多く残っている。
また、なんといっても眺望が素晴らしい。
東の東京湾、西の相模灘を見渡すことが出来、横須賀・葉山・逗子はもちろん、横浜、東京、房総半島、箱根、丹沢、江ノ島、伊豆、富士山などあらゆる美しい風景を見渡すことが出来る。
以前から、福島さんからお誘いをいただいていたのだが、今日は鷹取山にある「神武寺」の「秘仏のご開帳」の日であり、二人で出かけた。
朝9時にJR横須賀線・東逗子駅で待ち合わせ、鷹取山へ。
険しい山道を登り、神武寺へ。
京急線で「神武寺駅」という駅があり、その寺の存在は知っていたが、訪れるのは初めてである。

誰が開基したか、いつ開基したかもはっきりしない、謎の寺であるが、それだけに歴史の深みを感じさせる。
まるで、(奈良の)室生寺のようだよ。
と、登る前に福島さんがおっしゃっていたが、五重塔こそないものの、本当にそのような「気品」を感じさせる「天台宗」の寺である。
「秘仏」も素晴らしかったが、この寺全体の持つ「気品」が素晴らしい。
それを彩る「冬紅葉」も美しかった。
福島さんと歩くのは楽しいばかりでなく、毎回、実に興味深いことを教えていただける。
私も歴史や古典、寺社には詳しいつもりだが、福島さんの足元にも及ばない。
秘仏を眺めていると、僧侶が読経をするようなので、それを見ていこう、という話になったが、
天台のお経は美しいよ。
と言ったことに感心した。
宗派のお経の違いなど、これまで気にもしていなかった。
冬紅葉に囲まれ、秘仏を拝みながら、天台のお経を聞いていると、本当に、
天台宗のお経というのは美しいな~。
と感じ入った。
今日の収穫の一つである。
天台宗というのは抹香臭くなく、けばけばしくなく、「品」がある。
(会ったことはないが…)開祖・最澄の人柄を思わせる。
この山は一時期、石切場だったそうで、山腹の一部は今、ロッククライミングの格好の練習場となっている。
(本当はいけないそうだが…)


センボンヤリ
コウヤボウキ
など、珍しい野草も教えていただいた。
車で自宅へ戻る時、横横道(横浜横須賀道路)をいつも走るのだが、いつも、なんだかよくわからない「山深い」ところを通るのだが、そこがこのあたりだということも知った。

(真ん中の道路が横横道)
それにしても三浦半島の里山は本当に美しい。
「山歩き」は苦手と広言している私だが、せっかく、この三浦半島に住んでいるのだから、この里山を堪能しないのはもったいない、と考えるようになった。
今度は乳頭山に連れて行ってもらう約束をして解散した。
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