(秋田県八郎潟)
八郎潟まるまるひとつ植田かな
武藤大介
「海光」2024年冬号より。
季語は「植田」で「夏」(初夏)。
「八郎潟」は秋田県西部にある湖で、かつては琵琶湖に次ぐ第二位の面積を誇った。
明治から昭和にかけて食糧確保の為、大規模な干拓が行なわれ、今やそのほとんどが田圃になっている。
以前、記念館を見学したことがあるが、最先端の家電や機械などが導入され、豊かな農業ライフが行なわれていたらしいが、今は減反政策の影響で、どこか淋しい風景となっている。
この句の作者は秋田県能代市の出身。
いわばここは故郷と言っていい。
ここからは私の推論だが、この風景、つまり「八郎潟がまるまる植田となっている」風景は今現在の風景ではなく、作者の記憶の中の風景なのではないか。
どこまでも広がる八郎潟に苗が植えられ、風に気持ちよく揺れている。
この句は風景句でありつつ、なおかつ作者の原風景であり、ふるさと讃歌の一句である。
だから一句の世界が悠大なのである。
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