テレビ業界は酒宴が多い業界である。
しかも、その酒の飲み方は尋常ではなく、警察や救急車などのお世話になることも日常茶飯事だった。
なぜ過去形なのかというと・・・
昨今はコンプライアンスが徹底され、過度な酒宴はもはや架空の出来事のように風化しつつある。
今回は、酒にまつわる、すべらなそうな話。第16弾。
コンプライアンスがさけばれる現在でも飲み過ぎることはある。
しかし、そいつはいつも飲み過ぎている気がする。
そいつの名前はタカ(仮名)。
会社は違うが、結構一緒に遊んでいる男である。
タカの伝説は数多く、器物損壊やら、不法侵入やら、すでに法律の範囲を超えている酒癖の悪さを誇っていた。
しかし最近は年齢もあってか、少し落ち着いてきたとの根拠のない噂も流れてたりもしていた。
最近のタカは、酔っ払うとスーツの上着を紛失することが多いらしい。
後日、店や仲間に連絡してもスーツの行方を知る者は誰ひとりいなく・・・
そのせいで、クローゼットはツーパンツ・スーツの上着がなく、パンツだらけになっているという。
そんな中、スーツの行方の謎が明らかになる事件が起こった。
その日の前夜。
相変わらずタカは酔っ払っていて、いつものように記憶がないまま自宅へたどり着いていた。
朝起きると、また上着を着ていない。(まぁカバンも、靴もなのだが。)
またか・・・もう10着ぐらいになるな・・・
あきらめに似た溜息をついたその時、携帯が鳴った。
『警察です。あなたのカバンが届いているのですが、拾ってくれた方が是非あなたにお会いしたいとおしゃっておりまして・・・』
(どうせ謝礼目当てだろう・・・)と思いながら、
『時間を合わせてお伺いいたします。』
と丁寧に答えた。
そして昼。
警察には、拾得者の若い綺麗な女性が待っていた。
(これはなにかありそうだな)と意味不明な期待を胸に、タカはお礼を述べた。
すると、女性は真面目な顔で話し始めた。
『昨日の夜のことなんですが、あなたは線路沿いの道路にほぼ全裸で倒れていたんです。』
衝撃的事実である。
『そこにはホームレスが集まっていて、あなたの脱いだ物を盗もうとしたので、私が大声を出して止めたんです。カバンはなんとか守れましたがスーツの上着は盗まれてしまいました・・・』
『そ、それはありがとうございます。』
『その後、あなたは何事もなかったように残った服を着ると、裸足のまま帰って行きました。』
『そ、そうだったんですか・・・それで私に会いたかったっていうのは?』
『何故全裸で倒れていたのか?どうしても気になって・・・』
女性は心配そうに聞いてきた。
『逆に知りたいです・・・』
タカはそういうしかなかった・・・
しかし!!謎は解けた!!
最近、新橋のホームレスの間で小奇麗なジャケットが流行っているらしい・・・
やや大きめのサイズで・・・
内ポケットには・・・
オレンジの糸で、『Taka』と刺繍がはいっているという・・・
要チェックである。