この10年来毎年十一月に入ると2日間だけ
ガンセンターに検査に通う。
まだ無罪放免にはならないのだ。
このところ手足が冷えて困る。早くも手袋をしている。
ガンセンターへの電車の車両で手袋は私だけだった。
今日は採血のみ、すぐに終わった。
会計を待つ間見るともなしに人ウオッチング。
老夫婦、50代と思しき夫婦。男性女性様々。
中には本当に大変そうなお年寄り。この方は一体
どこがお悪いのだろうかと訝るほど元気一杯の壮年。
はて待合室で私はどっちに見えるのかしか?
ガンセンターに行くたび私にはもう一つ目的がある。
4年前にここの病棟で他界した弟の姿を探すのだ。
4年前の今頃入院中の弟を見舞って、一階のトイレの前で
別れたのが最後だった。
トイレの前には今もパジャマ姿の弟がいるような
気がしてふと目を泳がせるのだ。
無論居るはずもない。
弟の死んだ師走の夜更け、ガンセンターの中天には
煌々と満月だった。今日は太陽がいっぱいであった。
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