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SF掌編・「日記」
 
 
 金持ちの令嬢の、釈迦由美子は、今日が二十歳の誕生日で、たくさんプレゼントをもらいました。
 
 中に、ちょっと風変わりなプレゼントがあったので、「おや?」と首をひねって、眉をひそめました。
 
 美人の由美子が、眉を顰めると、ちょっとロマンチックな表情に見える…「顰に倣う」という昔の諺はそんな風な故事来歴で…ですが今は省略します。
 
 送り主は、変人で有名な”茶筒”という苗字の叔父さんでした。50過ぎても独身で、ひとりでおかしな発明をして、特許をとったりして、それで暮らしているらしい。法事であったことはあるけど、何を話したかもあやふや。
 
 奇行で有名なので、誰もまともに相手にしないし、妙な友人とかがぽつぽついるだけで、天涯孤独らしかった。
 
 …送られてきたのは、古ぼけた日記帳で、鍵がついている。入っていた箱に手紙が同封されている。
 
 「由美子、誕生日おめでとう。もう大人の仲間入りだね。今日は「日記の日」なんじゃよ。かの「アンネの日記」が書き始められた最初の日付にちなんでいるらしい。
 読んだことはあるかな?屋根裏に潜んで秘密警察とかの影におびえながらも、ユーモアを失わないけなげなアンネの素晴らしい文才が、世界中の人の胸を打ったんじゃ…
 で、姪にはアンネのようなすばらしい娘さんになってもらいたくて、昔に外国の古本屋で手に入れたいわくつきの日記帳を贈るぞよ。羊皮紙の、17世紀くらいのものらしくて、古本屋の説明によれば、これに毎日願い事を書き入れていると、なにか超自然的な霊力が現実界に作用して、どんどん夢や希望が実現していくらしい。だが、日記に宿っているのは「文藝の神」”ムーサ”で、文章が下手だと願望の実現の度合いが低くなって、いい文章、上手な作文になるほどに純粋に実現していくんじゃそうだ。由美子は文学部卒で、文才があるんだったよな?せいぜい頑張って日記をつけてみなさい。健闘を祈る」
 
 どうせ茶筒おじさんは暇なので、こういういたずらをしているだけで、真偽も定かでないが、面白い話だった。
 
 ピグマリオン効果というのもあるし、「願望をかなえるために上手に日記を書こう」そういう努力が、本当に自分にいい効果をもたらすかもしれない…それに、日記帳も、古ぼけてはいるがいかにも由緒ありげで、神秘的な霊力を秘めていそうに見えた。「デスノート」、それから「私の見た未来」?そういうマンガを読んだことがあったが、ノストラダムスの予言とかも荒唐無稽な話だけど、一概に一笑に付すわけにはいかないという定評を得ているのだろうか?
 
 どうせ世の中わけのわからないことだらけだ。しばらく、おじさんの与太話に冗談で付き合ってみるようなつもりで、日記を真剣に書いてみたいと思う。
 
<続く>