花火の思い出教えて!

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 <川端康成・「掌の小説」風に…>
 
 6月の初めから一週間くらいは、蛍の群舞が、近隣の清流で見物できるのだった。
 
 清吉は、お小夜を伴って、夕涼みがてらに、幻想的な光の饗宴を見上げていた。
 その聞こえた「名所」は、歩いて15分ほどの距離で、恋を知り初めた二人が、ロマンチックな逢瀬をするのちょうど都合よかった。
 
 「きれいだねえ。全然、静かなのがいいねえ。まるで二人であの世に来たみたいだ。人魂とよく言うけどね」
 「枕草子にもあったわね。『蛍の飛び違いたるもおかし』って。」
 
 平安朝の、千年前の昔にも、やっぱりこういう初夏の風物詩が、人々の目を愉しませて、やっぱり、こういう風に恋人たちが語らいあっていたのだろうか。
 
 「蛍は firefly 。花火は fireworks でしょ?英語は殺風景よね。日本語はどっちも含蓄あるポエムになってる…」
 「”ホタル”って響きもなんだか玄妙だね。火が垂れるとも書くよね。」
 「”花”に喩えるっていうのが、美学なんだわ。”秘すれば花”っていうのが「風姿花伝」の極意…」
 
 「奥ゆかしい、陰翳礼讃、花も恥じらう、とか?そういうのにラフかディオハーンとかが魅せられて…」
 
 「一瞬の儚さが日本人好みなんだなー無常、滅びの美学。ゲンジボタル、ヘイケボタルがいるのも故なきともしない、またむべなるかな」
 
 
 …花火師の清吉は、不図「ホタルの舞い」という新作の花火のアイデアが浮かび、そのデザインをさっきから頭の中でやっていて、お小夜の初々しい唇を見ながら話しているうちにその構想は、もうほぼ固まっているのだった…
 
  それは若いながら、冴えた腕を持つ伝統芸能の日本の職人の端くれの、手練の技の嚆矢の示現なのだった。
 
<了>