進化・進歩を感じることは?
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2024年の元日の朝に、某大新聞の朝刊の、第一面の片隅に、小さな広告が載った。
「”適者生存”…株式会社「ダーウィン」」
それだけだった。
その時は、ほとんど誰も気に留めなかったが、その日からその広告は毎日同じ場所に掲載された。
やがて、2週間を過ぎる頃に「いったい何の広告だろう?」と不思議がる人が増えてきて、ネットニュースに「意味不明、来歴不明。ナゾの広告…正体はなんぞや?」という記事が出たりして、話題になり始めた。
単に話題作りが目的だったとしたら、掲載者の「ダーウィン」社とやらはまんまと意図を果たしたわけだ。…
普段から鵜の目鷹の目のマスコミの中に、特にこの記事に強い好奇心を寄せた人物がいた。
「ネット風見鶏」というニュースサイトの新人記者である、登坂あかり、という25歳の新進気鋭の俊英が、この理解不能のADに興味を抱いたのだ。
「”ダーウィン”?あの例の進化論の提唱者のチャールズ・ダーウィン?で、”適者生存”?で、それだけか。毎日掲載されていればいやでも人目を引いて人口にも膾炙するだろうけど…いったい何のことだろう?」
さっそく掲載元の「木鐸新聞」に問い合わせて、「ダーウィン」社の連絡先を突き止め、あかりは、広告の責任者に掲載の意図と意味を聞き出すことにした。
「ええっと…070の9088の…担当者は兜太さんか…こんな名前の俳人いたっけ。苗字は珍しいな」
「RRRRRRR…RRRRRRR…」
「はい。兜太です。」
「兜太さんですか?ダーウィン社の広告担当の方ですか?」
「そうです。何か?」
「毎朝、木鐸新聞に短い広告を出しておられますよね。いったいどういう意味だろうと話題になっていて…あ、申し遅れましたが私は…」
自己紹介と取材の意図を話し、あかりは兜太氏とアポを取って、詳しく話を訊くことにした。広告の担当者からすれば願ったりかなったりのなりゆきのはずである。三日後の昼過ぎに「ドードー」という喫茶店でインタビューという運びになった。
当日は黄砂が飛んでいて、花粉も舞っていた。春一番が吹き始めている、例のなんだか気分もむずむずする陽気の時節だった。
…件の兜太氏は、先に来て、窓側の席で豆乳ラテをかき回していた。
今時に珍しく、髪にポマードをつけていて、H本龍太郎という昔の総理大臣に似ていた。
「お待たせしました。登坂です。」
「いや今来たところです。兜太です。よろしくお願いします」
兜太氏は切れ者っぽい様子ではきはき挨拶をして、名刺を差し出した。
…「株式会社『ダーウィン』CEO 兜太 徹」とあった。
<続く>