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 (宮沢賢治風に)
 
 「山滴る」というのは夏の季語で、夏の山の緑色がいかにも鮮やかで瑞々しい感じのことをいいます。
 山奥の清流の赤や緑色の苔に澄み切った水滴がぽたぽたと零れている…ああいう清冽で生命の根源そのもののような光景、「山滴る」という形容句を最初に作ったのは郭熙という詩人らしいですが、念頭にあったのはこういうイメージだったかもしれない…
 
 そういう夏も酣、今まさに山滴る趣の深山幽谷に瑠璃という女の子が住んでいました。
 名前通りにピカピカした感じの愛らしい少女でした。
 両親は貧しくて、町に出稼ぎに行っていて、瑠璃はおじいさんと二人暮らしでした。
 二人の家の生業は釣り宿で、町からこの山奥の川まで鮎を釣りに来るお客さんを泊めて、なにくれと釣りの準備を整えてあげるのが仕事でした。
 「瑠璃、今日はなあ、面白いものを貰ってきたぞ。見ろ」
 「?なあに、コレ」
 「これはマリモと言って、阿寒湖という湖にしか生えない珍しい藻の一種なんじゃ。
こんな風に真ん丸で綺麗な緑色だから皆が珍しがってお土産に持ち帰ったりするんじゃよ。瑠璃にあげるから水槽に入れて眺めて楽しみな」
 「ふうん」
 ゴムボールくらいの大きさのマリモは表面にびっしりと細かい泡が集っています。光合成だか呼吸だかをしているのでしょう。いかにも清らかな水の中に生えていそうな美しい濃い緑色。
 神秘的で、強い不思議な生命力を湛えているように見えました。
 「なんだか眺めていて飽きなくて楽しくていいわね?マリモっていう響きも面白い。緑色は目にいいって言うし…しばらく”飼って”みよう…」
 瑠璃はマリモに「真理」という名前を付けて、その日は寝ました。