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たろうさんの夏(終章)
ザワザワと一心に
桑の葉を囓り終えた
おこさま(蚕)のように
わたしも時を囓るが
消化できない
糸も吐けない
昔流した涙と
遠い夏の記憶に
しがみついてる
山の彼方で
八月の夏が弾けて
茜の空に染まり
夕焼けとなって
映えてる
誰かが叫んでる
青年のわたしだ
「夏が終わるんだよぉ~」
彼は夏の終わりを
信じられない
海鳴りのように
聞こえていたセミの
幻聴が消えて
秋がくるのも
わたしの心にも
静かな闇があるんだ
「おい俺は お前の影だよ」