天正期における北條氏照家臣団 ー月齋ー
―― 土屋備前守軍役人數書立に見る戦国 ――
三二〇 北条氏照着到書立写 諸州古文書一二
十一人上下 一本さし物 月齋
八人手明
以上
【月齋 月斎吟領(げっさいぎんりょう)】
武蔵国滝山城(八王子市)城主北条氏照の家臣。使者を務める。天正八年十月二日北条氏照朱印状写(佐野家蔵文書)では小野田源太左衛門尉に武田勝頼との戦いに出陣を命じ、先駆けを申し渡した。奉者は吟段とあり吟領の間違いか。年未詳初春(一月)七日月斎吟領書状写(寺院証文一・四二六一)では古河公方の奉行月輪院道久に新年の挨拶を述べ、五明(扇)と芳名(茶)を贈呈された礼に杉原(紙)を贈呈した。「月斎吟領(花押)」と署名。天正十八年正月十七日北条氏直書状(仙台市博物館所蔵伊達文書・三六一七)では奥州会津黒川城(福島・会津若松市)城主伊達正宗に北条方に味方して出陣の事を聞いて甲冑を贈呈し、月斎吟領を使者として派遣すると伝えた。以前から北条氏と伊達氏の交渉役は北条氏照の役であり、そのために月斎吟領を使者として派遣した。年未詳九月二十六日北条氏照朱印状写では相模国西郡早川(神・小田原市)海蔵寺に合力として白綿廿把を寄進した。奉者は月斎(吟領)。