昔書いていた詩(117) 「山椒魚」 | たろうくん(清水太郎)のブログ

たろうくん(清水太郎)のブログ

八王子の夕焼けの里でniftyの「清水中世史研究所」(八王子地域の中世の郷土史)とYahooで「清水太郎の部屋」として詩を書いてます。


    山椒魚

 川はひっくり返って
 山椒魚の両手のような
 水たまりと
 うねりを見せて
 光っている

 陽の沈んだ空には
 天井がない
 貼り絵のような
 雲が浮かんでいる

 雲の淵には
 夕陽の欠片が
 纏わりつき
 雲は強調された
 楽譜のアクセントのように
 動いている
 止まっている
 重力がない

 グリーンの手袋を
 嵌めた大地を
 川が流れてゆく
 その上に闇が
 覆いかぶさる

 疾走する救急車の
 四角い窓から
 貴女の眼が不安げに
 動く風景を見ている
 動かない私の心の
 眼と衝突する

 私の両眼には
 ひっくり返った川が
 冬の日の山椒魚の
 腸のように
 映っている