いよいよだ——
アルコール依存症の夫と暮らすうちに
私はいつしか「女」であることを忘れていた。
触れられたいとも思わなかったし、
自分から触れたいと思う日が来るなんて
想像もしていなかった。

けれど夫が回復へ向かい、
穏やかな時間が少しずつ戻ってきた頃、
私はまた
「夫と近づきたい」
そう思うようになっていた。

その夜、私はひとりで緊張していた。
若い頃みたいに自然にはいかない。
どう始めればいいのかも分からない。
夫はなかなか寝室へ来なくて、
私は待ちながら、少しずつ不安に
なっていった。
やっと私の隣に来た夫。
けれど私達はもう、
昔のままではなかった。

長い年月の間に、
身体も、気持ちも、
少しずつ変わっていた。

そして私達は、その変化を見ないまま
長い時間を過ごしてきたんだと思う。

私はそのことに気付いた途端、
溢れる涙が止まらなくなった。

うまくいかなかったからじゃない。
もう戻らない時間のこと。
傷つけ合ってしまった日々のこと。
責め続けてしまった自分のこと。
色んな感情が一気に溢れてきた。

すると夫は、
驚くほど強く私を抱きしめた。

言葉にはならなかったけれど、
心の中で『ごめん』と言っているみたい
だった…
その腕の中で私は、
夫もまた苦しんでいたんだと
初めて気が付いた。

けれど——
ここから私は、
“触れ合う”ことの難しさを
思い知ることになる。
身体も、心も、
若い頃のままではなかったから。