『台湾海峡一九四九』の姉妹版

『永遠の時の流れに』を読みました。

 

著者の龍應台氏は台湾の作家・評論家です。

『永遠の時の流れに』は、母・應美君に語りかける手紙、という形式をとったエッセイのようなものです。

母・美君は認知症を発症して、もう娘のこともわかりません。

著者は都会を離れて母と暮らし、静かに死を迎えようとしている母との日々を、愛おしむようにして暮らしています。

 

正直、私はつらくて、途中で何度も本を閉じました。

私は故郷を遠く離れて、もう20年になります。

母の手をとってクリームをぬってあげたり、話しかけたり、髪をすいたり、そういうことの一切を放棄している私は、龍應台さんの日々を見ると、羨望やら、悔恨やら、自責やら・・・ぐちゃぐちゃな思いが湧いてきて、途中で読むのをやめてしまいました。

もちろん、著者と私とでは生活環境も大きく違いますし、世の中の娘がぜんぶ彼女のような生き方ができるわけでもない、それはわかっています。でも。でも。

母は、私を愛おしんでくれた。

母は、私の幸せを願ってくれた。

母は・・・。

姉は、母のそばで、龍應台さんのように母に寄り添っています。

「娘は遠くに嫁にやったら、いかんバイ」

母の口癖です。

ごめんね、お母さん。

つらい、気持ちで読み終えました。

もっと、もっと、いろんな話をしておけばよかったね。

お母さんが、覚えていてくれるうちに。

仲の良い友達みたいに、旅行でも買い物でも、しておけばよかったね。

お母さんが、歩けるうちに。

 

本の中には、母のことだけではなくて、ドイツにいる息子さんたちとのあれこれが書かれていて、それは思わず笑ってしまいました。

息子の恋人に嫉妬する母の気持ちとか・・・ウチの息子にはまだ彼女はいないけど、もし彼女を連れてきたら、私は一体どんな気分なんだろう・・・應台さんは「毒殺したい」と思ったそうですよ。・・・おそろしい。私もそんなふうに思うんだろうか。

 

それから、自分の死後に銀行口座が凍結される前に、息子たちにお金を引き出させよう(手続きが面倒だし、中国語不得意な息子さんたちには大変だろうからという親ゴコロ)と、息子さんに持ちかけるくだりなんか、もう爆笑です。

本人はいたって真面目。わかります。きっと私もそうなります。

「私が死んだら、すぐ銀行行って、お金を引き出すのよ!」って大真面目で言う應台さん。

特に應台さんは著名人だから、もしもなくなったらニュースになります。そのニュースが出る前に!!って、真剣に息子に話してるのですが・・・息子さんは冷静です。

「それで、ママは、ママが死んだらすぐに銀行に行けって言うんだね?」

・・・ちーん。

 

母は、かくも愚かしく、かくも愛おしい。